NIMSは、多数の材料組成を短時間で評価できる新しい実験手法を開発し、磁性材料の異常ホール効果の特性を従来の30倍の速さで測定することに成功しました。得られた膨大なデータを機械学習で解析し、その予測に基づいて新しい材料を実証した結果、磁気をより敏感に検出できる新しい磁気センサー材料の開発に成功しました。
今回、本研究チームは、1枚の薄膜試料の中で連続的に組成が変化する「組成傾斜薄膜」を用いて、効率よく評価できる新しい実験手法の開発に成功しました。これにより、1組成あたり約0.2時間で評価でき、従来手法に比べて約30倍の高速化を実現しました。さらに、本手法を用いて、鉄(Fe)に重元素を1種類加えた二元系薄膜の異常ホール効果を系統的に調査しました。その結果を基に、より大きな効果を示す可能性のある三元系材料(Feと2種類の重元素)を予測する機械学習モデルを構築しました。そして、その予測に基づき探索したFe–Ir–Pt(鉄-イリジウム-白金)系の新材料において、Fe-X二元系材料の最大値(5.25マイクロオーム センチメートル)を上回る、6.5マイクロオーム センチメートルの異常ホール抵抗率を観測することに成功しました。
本研究成果は、現地時間2025年9月3日付で「npj Computational Materials」誌に掲載されました。
本研究は、NIMS 磁気機能デバイスグループの遠山 諒 ポスドク研究員(研究当時)、桜庭 裕弥 グループリーダー、データ駆動型材料設計グループの岩﨑 悠真 主幹研究員らによる研究チームによって、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「未踏探索空間における革新的物質の開発」(JPMJCR21O1)、および文部科学省 データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト「データ創出・活用型磁性材料研究拠点」(JPMXP1122715503)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.55MB)
<論文タイトル>
- “High-throughput materials exploration system for the anomalous Hall effect using combinatorial experiments and machine learning”
- DOI:10.1038/s41524-025-01757-5
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