ポイント
- 糖尿病関連腎臓病(DKD)と腸内細菌叢(さいきんそう)の関連が報告されている
- 研究グループが以前に同定した細菌叢由来の細胞死を誘導するペプチドであるcorisin(コリシン)が DKD患者の血液中で上昇しており、重症度と正の相関を示した
- DKDマウスにおいて、corisinの活性を抑えるモノクローナル抗体の投与により、腎臓の線維化が改善した
- 腸内細菌叢が産生するcorisinが腸管バリア破綻により全身に移行することが示唆された
- corisinが腎由来細胞である尿細管上皮細胞およびポドサイトの細胞老化を誘導した
- 腎不全患者の腎組織でcorisinの発現増加を認めた
- 本研究は細菌叢由来corisinを標的としたDKDの新たな治療法の可能性を示すものである
糖尿病関連腎臓病(Diabetic Kidney Disease:DKD)は、新規透析導入における原因疾患の第1位であり、新たな治療方法の確立が求められています。近年、腸内細菌叢の乱れが腎臓病の進展に関連することが報告されていますが、詳細なメカニズムは不明でした。このたび、三重大学 大学院医学系研究科 代謝内分泌内科学、同 免疫学講座の研究グループは、同グループが発見した細菌叢由来の細胞死を誘導するペプチドであるcorisinがDKD患者の血液および尿中で増加し重症度と関連すること、corisinの発生源が腸内細菌叢でありDKDにおいてその産生が増加することを明らかにしました。さらに、DKDマウスにおいてcorisinを阻害することにより腎臓の老化が抑制され、その結果として線維化が改善することを明らかにしました。
今回の研究成果は、細菌が産生するペプチドがDKDの悪化原因となりうることを示しており、細菌叢由来のペプチドを標的にした新しい治療法の開発につながることが期待されます。
研究成果については、「Nature Communications」オンライン版に2025年8月25日付(日本時間)で掲載されました。
本研究成果は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「細菌叢由来ペプチドに着目した糖尿病における心腎連関メカニズムの解明」(JPMJFR2216)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(22K08280)、武田科学振興財団、日本糖尿病協会、日本イーライリリーイノベーション研究助成、大和証券財団の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Microbiota-derived corisin accelerates kidney fibrosis by promoting cellular aging”
- DOI:10.1038/s41467-025-61847-2
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