ポイント
- 化学修飾されたRNAが代謝されると修飾ヌクレオシドが生じますが、その機能や意義については十分に解明されていませんでした。
- 本研究により、修飾ヌクレオシドのうち、毒性を持っているm6A、m6,6A、i6Aの3種が2種類の共通の酵素によってIMPへ代謝され、無毒化する代謝経路が存在することが分かりました。
- この代謝経路は進化的に保存されており、特に哺乳動物では糖代謝や脂質代謝と関連する可能性が示されたことで、今後、修飾ヌクレオシドと疾患発症の関連性について、より深い理解が進むことが期待されます。
RNAはさまざまな化学修飾を受け、現在までに約150種類以上が同定されています。これまで、細胞内におけるRNA修飾の役割については研究が進んでいましたが、RNA修飾が代謝された後に生じる修飾ヌクレオシドの機能や意義については十分に解明されていませんでした。
東北大学 加齢医学研究所の小川 亜希子 助教(当時、現所属は薬学研究科 准教授)、魏 范研 教授、生命科学研究科の田口 友彦 教授、医学系研究科の中澤 徹 教授らは、九州大学 生体防御医学研究所の渡部 聡 准教授、稲葉 謙次 教授、農学研究院の有澤 美枝子 教授、熊本大学 生命資源研究・支援センターの荒木 喜美 教授、生物環境農学国際研究センターのアレン・イールン・ツァイ 助教、澤 進一郎 教授らとの共同研究、およびライプツィヒ大学やハーバード大学などとの国際共同研究により、修飾ヌクレオシドのうち、m6A、m6,6A、i6Aが毒性を持ち、酵素ADKとADALによって無毒なIMPへ代謝されるという経路を発見しました。この経路が破綻すると修飾ヌクレオシドやその中間代謝物が蓄積して糖代謝や脂質代謝の異常が生じ、さらにはリソソームなどの細胞小器官の機能不全が起こることが毒性の原因であることを同定しました。
本研究によって同定された酵素の一部はすでにヒト疾患が報告されており、今後、修飾ヌクレオシドが病態解明や治療開発につながる可能性があります。
本研究結果は現地時間2025年8月20日付で科学誌「Cell」に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(22H02813、22H04628、23K18088、20H00422、23H04748、21H04758、24H01322、21H02659、21H05265、25H00007、25H00984、JP 22H04922(AdAMS)、JP 16H06276(AdAMS))、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(FOREST;JPMJFR220K、JPMJFR205Y、JPMJFR205X)、同 戦略的創造研究推進事業 ERATO「鈴木RNA修飾生命機能プロジェクト」(研究総括:鈴木 勉、JPMJER2002)などの支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.3MB)
<論文タイトル>
- “Adenosine kinase and ADAL coordinate detoxification of modified adenosines to safeguard metabolism”
- DOI:10.1016/j.cell.2025.07.041
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