京都大学,公立千歳科学技術大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年8月13日

京都大学
公立千歳科学技術大学
科学技術振興機構(JST)

単一スズ欠陥中心を内包する極微ナノダイヤモンドの開発に成功

~光子を用いた量子コンピューターや量子ネットワークの実現に期待~

従来のコンピューターでは時間がかかりすぎて解けない問題を解けると期待される光量子コンピューターや、量子力学の原理を用いることで物理的に安全性が保証される量子暗号通信の実現には、量子力学的な相関(量子もつれ)を持つ光子を発生させる光源や、量子もつれを利用して光子の量子状態を遠隔地に転送する量子中継器などの開発が重要です。近年、これらを実現する発光体として、光の波長(色)がそろった単色性が高い光子を生成し、かつ、量子状態を保存するメモリーとして利用可能な、ダイヤモンド中の単一スズ(Sn)欠陥(Vacancy)中心(SnV中心)が注目されています。しかし、これまで単一SnV中心の形成はバルク(塊状)ダイヤモンドに限られており、ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの微小なダイヤモンド粒子(ナノダイヤモンド)では実現されていませんでした。

今回、公立千歳科学技術大学 髙島 秀聡 准教授、京都大学 大学院工学研究科 嶋﨑 幸之介 特定研究員、竹内 繁樹 教授らからなる研究グループは、量子科学技術研究開発機構の共同研究グループとともに、Snイオンをナノダイヤモンドに注入し熱処理を施すことで、ノイズとなる背景光子の発生がほとんど無い、単一SnV中心を内包するナノダイヤモンドの開発に成功しました。

今回得られた成果は、ナノダイヤモンドと超微細構造光素子によるハイブリッド単一光子源や量子中継器などの実現への道を開くものであり、光子を用いた量子コンピューターや長距離量子暗号通信、さらには、量子センシングなどの研究の飛躍的な発展に貢献すると期待されます。

なお、本成果は、2025年8月13日(米国東部時間)に米国化学会が発行する国際学術誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR2257)、同 ERATO「竹内超量子もつれプロジェクト」(JPMJER2402)、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118067634)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(24H00195、21H04444、23K22426)、同 二国間交流事業(JPJSBP120242003)、同 特別研究員奨励費(23KJ1190)、村田学術振興・教育財団、寿原記念財団、ARIM(JPMXP1224KT0013)などの支援を受け、量子科学技術研究開発機構と共同で実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Creation of single tin vacancy color centers in small nanodiamonds”
DOI:10.1021/acsphotonics.5c00627

<お問い合わせ先>

(英文)“Creation of Single Tin-Vacancy Color Centers in Small Nanodiamonds”

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