大阪公立大学 南部陽一郎物理学研究所/大学院理学研究科の竹内 宏光 准教授らの研究グループは、韓国科学技術院(KAIST)のJae-yoon Choi(ジェユン・チョイ) 准教授らの研究グループと共同で、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性(KHI)と呼ばれる、流体の流れに関する物理現象の量子版(量子KHI)の観測に、世界で初めて成功しました。また、本研究で観測した量子KHIの界面から生じた渦が、2022年に本研究グループが予測した新種のスキルミオン(三日月スキルミオン)であることが明らかになりました。
KHIは、速度が異なる2つの流体の境界面の波が発達して特徴的な渦巻き模様を引き起こす現象で、流体力学の分野で古くから知られており、フィンセント・ファン・ゴッホの代表作である「星月夜」にインスピレーションを与えたともいわれています。KHIは流体の粘性の有無に関わらず生じるため、粘性を持たない超流動体でもKHIが生じることが予言されていましたが、これまでKHIの界面模様が観測された例はありませんでした。
本研究で発見された新種のスキルミオンは、超省エネ型次世代メモリーデバイスなど、スキルミオンを活用した応用技術の基礎原理に革新をもたらすことが期待されます。
本研究成果は、現地時間2025年8月8日(金)付で、国際学術誌「Nature Physics」のオンライン速報版に掲載されました。
本研究は、JSPS 科研費(JP18KK0391、JP23K20228)、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学(研究総括:後藤 晋)」における研究課題「量子粘性の検証と複雑な量子流動現象の解明(研究代表者:竹内 宏光、JPMJPR23O5)」の支援を受けて行われたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(535KB)
<論文タイトル>
- “Stable singular fractional skyrmion spin texture from the quantum Kelvin–Helmholtz instability”
- DOI:10.1038/s41567-025-02982-x
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