ポイント
- 軽量・小型・高機動性を兼ね備えた昆虫に、電子デバイスを搭載して外部から制御する「サイボーグ昆虫」が、新たな探索・調査技術として注目されている。
- 本研究では、マダガスカルゴキブリに電子デバイスを取り付ける作業をAI搭載ロボットアームで自動化する手法を開発した。
- 今後は、災害救助活動への迅速な投入に加え、社会インフラの点検や探索活動などへの応用・実用化が期待される。
JST ムーンショット型研究開発事業において、南洋理工大学(シンガポール)の佐藤 裕崇 教授の研究グループが世界で初めてサイボーグ昆虫を自動で生産する技術を開発しました。
これまでサイボーグ昆虫は手作業で作製されており、熟練技術者による煩雑かつ時間のかかる工程を経る必要がありました。このため、災害現場などに大量に投入するための自動化・大量生産技術の開発が望まれていました。
本研究グループは、AIと画像認識技術を組み合わせたロボットアームによる自動組立システムを開発し、体長が6~8センチメートルのマダガスカルゴキブリへの電子デバイスの取り付けを高速かつ安定して行う手法を確立しました。その結果、サイボーグ昆虫の生産を従来比約60倍高速化し、1体あたり1分程度でサイボーグ昆虫を安定かつ高速に量産することに成功しました。
本成果は、人手に依存せずにサイボーグ昆虫を量産するための基盤技術として、災害救助活動への迅速な投入に加え、社会インフラの点検や探索活動などへの応用・実用化が期待されます。
本研究成果は、2025年7月28日(英国時間)に英国の学術誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。
本成果は、以下の事業・研究開発プログラム・研究開発プロジェクトによって得られました。
ムーンショット型研究開発事業
研究開発プログラム | ムーンショット目標3「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」 プログラムディレクター:福田 敏男(名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授) |
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究開発プロジェクト | 「人・AIロボット・生物サイボーグの共進化による新ひらめきの世界」(JPMJMS223A) プロジェクトマネージャー:森島 圭祐(大阪大学 教授) 課題推進者:佐藤 裕崇(南洋理工大学 教授、大阪大学 客員教授) |
研究期間 | 2023年1月~2024年3月 |
上記研究開発プロジェクトでは、超小型センサー、通信機器、行動制御ユニットが搭載された生物サイボーグ群から得られる行動情報と周辺環境情報を解析して得られる行動原理に基づいて、人々の行動を誘発したり、人々とロボット群との違和感のない連携を実現する、AIによる自己組織化プラットフォームの構築を目的としています。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(381KB)
<論文タイトル>
- “Cyborg insect factory: automatic assembly for insect-computer hybrid robot via vision-guided robotic arm manipulation of custom bipolar electrodes”
- DOI:10.1038/s41467-025-60779-1
<お問い合わせ先>
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