京都大学,ファインセラミックスセンター,東北大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年7月25日

京都大学
ファインセラミックスセンター
東北大学
科学技術振興機構(JST)

構造常識を覆すトポケミカル反応の発見

~カゴメ格子を持つ新しい2次元量子物質の創製に成功~

酸化物の性質は、金属の価数や空間配列によって大きく左右されます。中でも、結晶骨格を保ちながら特定の原子だけを選択的に出し入れする「トポケミカル反応」は、物性を制御できる手法として広く用いられてきました。しかし、従来は金属サイトの数や配置を保つ「1:1対応」が前提とされ、骨格自体の再構成は不可能と考えられてきました。京都大学 大学院工学研究科の樋口 涼也 修士課程学生、石田 耕大 博士課程学生(研究当時)、高津 浩 准教授、陰山 洋 教授らの研究グループは、京都大学 理学研究科、ボルドー大学、ファインセラミックスセンター、東北大学、桂林理工大学との共同研究により、「1:1対応」を破る新しいトポケミカル反応を世界で初めて実現しました。

本研究では、モリブデン(Mo)とタンタル(Ta)を含む層状酸化物にアンモニア処理を施し、MoO4四面体構造の2層がMoO6八面体の1層へと変換される「2:1構造再編」に成功しました。変換後の八面体層内には、Mo原子がカゴメ格子と呼ばれる特異な2次元構造を形成し、量子物性の発現を示唆する結果を確認しました。この成果は、トポケミカル反応による構造変換が“骨格再構成”へと進化し得ることを示す初の事例であり、低温合成で到達可能な構造自由度の飛躍的拡大を意味します。今後の量子機能材料の設計に新たな指針を与えるものであり、量子コンピューターや省エネルギー電子デバイスへの応用も期待されます。

本研究成果は、2025年7月24日(現地時間)に国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会 先端研究拠点事業「エネルギー変換を目指した複合アニオン国際研究拠点」(JPJSCCA20200004)、科学技術振興機構(JST) 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)「次世代複合アニオン科学:反応・構造制御と新機能」(JPMJAP2408)、科学研究費補助金(JP20H00384、JP22H04914、JP24K01583)、学術変革領域研究A「超セラミックス」(JP22H05143、JP22H05145、JP22H05146)、日本学術振興会特別研究員(JP20J15621)の支援を受けました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Topochemical Reaction Involving Double-to-Single Layer Conversion: Mo3Ta2O10N with a Kagomé Lattice”
DOI:10.1021/jacs.5c05749

<お問い合わせ先>

前に戻る