京都大学,理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年7月24日

京都大学
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

自然界の構造体はどこまで再設計できるか?

~人工たんぱく質設計で細胞骨格様構造を創出~

細胞の形や動きは、アクチンやチューブリンなどのたんぱく質が織りなす繊維状の「細胞骨格」によって支えられています。細胞骨格は、細胞内外の環境に応じて集合や分解を繰り返す柔軟な構造体であり、その動的な性質は生命現象の根幹をなしています。こうした複雑で変化に富んだたんぱく質集合体の仕組みを理解するために、たんぱく質を自在に設計し、動的な構造を人工的に再現するという新たなアプローチが注目されています。

京都大学 アイセムス(高等研究院 物質-細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS) 野地 真広 特定研究員と鈴木 雄太 特定助教(JST さきがけ研究者)を中心とする研究グループは、異なる2種類の人工たんぱく質を組み合わせることで、温度や塩濃度などの環境変化に応じて可逆的に構造が変化する「チューブ状たんぱく質集合体」の設計と構築に成功しました。さらに、細胞骨格たんぱく質アクチンに由来するアミノ酸配列(D-loop)を移植することで、アクチン繊維と類似したらせん構造を人工的に誘導することにも成功しました。

本研究は、京都大学 医生物学研究所 杉田 征彦 准教授および理化学研究所 宮﨑 牧人 チームディレクターらとの連携の下で実施されました。この成果は、自然界に近い構造の再現と、動的に変化する人工構造の制御を同時に実現したものであり、今後は生命の仕組みの解明に加え、バイオマテリアルへの応用が期待されます。

本研究成果は、2025年7月22日(現地時間)に、英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR22A7、JPMJPR20ED)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(19H02832、19K22253、21H05116、21H05117、20K22628、21J00530、22KJ1644)、武田科学振興財団、伊藤忠兵衛基金の支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Protein design of two-component tubular assemblies similar to cytoskeletons”
DOI:10.1038/s41467-025-62076-3

<お問い合わせ先>

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