東京大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年7月18日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

量子センサーで“見えない磁石”の構造を解明

~八極子磁壁の正体に迫る~

ポイント

東京大学 大学院理学系研究科の塚本 萌太 大学院生(当時)、肥後 友也 特任准教授(当時)、佐々木 健人 助教、中辻 知 教授、小林 研介 教授らによる研究グループは、東京大学 物性研究所の大谷 義近 教授、三輪 真嗣 准教授、理化学研究所の近藤 浩太 上席研究員(当時)およびスイス連邦工科大学 チューリッヒ校のChristian Degen(クリスチャン・デーガン) 教授、Pietro Gambardella(ピエトロ・ガンバルデーラ) 教授らと共同で、八極子秩序のある反強磁性体Mn3Snの磁壁の内部構造の観測に成功しました。

反強磁性体の磁区構造は、次世代の高速・省エネスピントロニクスデバイスの鍵となる構造です。反強磁性体は周囲に磁場をほとんど漏らさないという特性から高い集積度が期待されますが、その特性ゆえに、磁区や磁壁といった内部構造の観測が非常に困難でした。本研究は、高品質なMn3Sn結晶の磁区制御の過程をダイヤモンド量子センサーで測定することで、わずかな漏れ磁場の変化から、八極子秩序を保った磁壁の内部構造を明らかにしました。本成果は、多極子秩序に関する基礎的理解を深めるとともに、今後のデバイス開発に向けた指針を提供するものです。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review B」のEditors' Suggestionに選定され、現地時間2025年7月17日付でLetter論文として出版されました。

本研究は、日本学術振興会 科研費「量子センサを用いたメゾスコピック磁性の研究」(課題番号JP22KJ1059)、「ダイヤモンド量子センサによるメゾスコピック磁性研究の基盤構築」(課題番号JP23K25800)、「量子金属における創発現象の相関設計」(課題番号JP25H01248)、「窒化ホウ素量子センサによる磁性研究の新展開」(課題番号JP24K21194)、「量子センサによるスピンダイナミクスの可視化手法の開発」(課題番号JP22K03524)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「量子スピン顕微鏡で切り拓く極限物性の探索」(課題番号JPMJCR23I2)、同 未来社会創造事業 大規模プロジェクト型「スピントロニクス光電インターフェースの基盤技術の創成」(課題番号JPMJMI20A1)、スイス国立科学財団(課題番号200020_200465、200020_212051/1)、ダイキン工業株式会社、近藤記念財団、三菱財団、東北大学電気通信研究所共同プロジェクトの支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Observation of chiral domain walls in an octupole-ordered antiferromagnet”
DOI:10.1103/njnm-nl6n

<お問い合わせ先>

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