千葉大学 国際高等研究基幹・大学院 理学研究院の佐藤 大気 特任助教、高橋 佑磨 准教授の研究チームは、ショウジョウバエが天敵などの視覚的な脅威に対してどのように反応するかを解析し、恐怖反応とその緩和に周囲の個体の行動が大きく影響していること、そしてそのような個体間相互作用に関わる遺伝的な基盤を明らかにしました。また、恐怖反応の程度に多様性があり、かつ他個体への同調が存在すると、捕食者に襲われづらくなるといった集団としてのメリットが生じることを発見しました。さらに、集団において生じる、「多様性効果」に関わる遺伝的変異を検出する新たなゲノム解析手法を提案しました。
本研究成果は、個体の行動が集団のふるまいにどう影響するか、そのメカニズムや遺伝的な基盤を理解するうえで新しい視点を提供するものであり、ショウジョウバエをモデルに、視覚的な情報が個体内でどう処理され、集団に伝搬していくかを明らかにする重要な手がかりとなります。
本研究成果は、2025年7月7日(現地時間)に、国際学術誌「Nature Communications」で公開されました。
本研究は、以下の助成金の支援を受けて遂行されました。
- ・科学研究費助成事業「マルチエージェント逆強化学習による動物の集団形成を制御する意思決定機構の解明」(JP22K15181)
- ・科学研究費助成事業「個体の不均一性がもたらす集団行動の多機能性:集団行動の高次遺伝基盤と制御」(JP22H05646)
- ・科学研究費助成事業「コントラリアン生物学の創生:逆張り戦略がもたらす新しい社会均衡のしくみ」(JP23H03839)
- ・科学研究費助成事業「天邪鬼行動が集団に及ぼす社会的・生態学的影響とその遺伝基盤」(JP23H03840)
- ・科学研究費助成事業「ゲノムデータ駆動型アプローチによる生態学的動態の高次遺伝基盤の解明」(JP23H02550)
- ・科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 ACT-X「情動伝染の内的原理の解明と情報操作による恐怖緩和の実現」(JPMJAX24L7)
- ・日本科学協会 笹川科学研究助成「恐怖反応の創発特性に関する進化遺伝基盤の検証」
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(993KB)
<論文タイトル>
- “Neurogenomic and behavioral principles shape freezing dynamics and synergistic performance in Drosophila melanogaster”
- DOI:10.1038/s41467-025-61313-z
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千葉大学 国際高等研究基幹・大学院 理学研究院 特任助教
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