ポイント
- 友達についての記憶を保持する海馬が、「性別」などの相手に付随した情報をどのように表現しているのかを解明しました。
- 海馬の腹側CA1領域には、特定の他個体に応答する細胞(アイデンティティー細胞)と、性別や系統という属性を表現する細胞(プロパティ細胞)が共存しており、それらの組み合わせで特定の相手についての記憶が表現されていました。
- 多様な他者を記憶する脳の仕組みの理解を深めるとともに、その破綻が関与すると考えられる疾患メカニズムの解明への貢献が期待されます。
東京大学 定量生命科学研究所の度会 晃行 特任助教、田尾 賢太郎 助教、奥山 輝大 教授による研究グループは、他者の情報を記憶として整理する脳の仕組みを明らかにしました。これまでに同グループの研究によって、友達についての記憶が、記憶中枢である海馬の中の「腹側CA1領域」という小領域に貯蔵されることが分かっていた一方で、「性別」などその相手に付随した情報がどのように表現されているのかは分かっていませんでした。
本研究では、マウスを用いた神経活動の詳細な記録によって、腹側CA1領域には特定の相手に応答する「アイデンティティー細胞」と、相手にかかわらず性別や系統という属性を表現する「プロパティ細胞」が共存していることを発見し、これらの細胞が組み合わされて特定の友達の記憶を表現していることを示唆しました。
本研究成果は、現地時間2025年7月3日付の「Science誌」(オンライン版)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR2143)、戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR23B1)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(課題番号:JP18H02544、JP19K06951、JP20K21459、JP21H02593、JP21H05140、JP22K06481、JP23K19395、JP24K18158)、特別研究員奨励費(課題番号:JP20J01468)、日本医療研究開発機構(AMED)「脳とこころの研究推進プログラム(課題番号:JP21wm0525018)、再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(課題番号:JP24bm1123057)、内藤記念科学振興財団、セコム科学技術振興財団の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(432KB)
<論文タイトル>
- “Representation of sex-specific social memory in ventral CA1 neurons”
- DOI:10.1126/science.adp3814
<お問い合わせ先>
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東京大学 定量生命科学研究所 附属高度細胞多様性研究センター 行動神経科学研究分野 教授
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E-mail:souhatsu-inquiryjst.go.jp
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<報道担当>
東京大学 定量生命科学研究所 総務チーム
Tel:03-5841-7813
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