ポイント
- ヘチマスポンジのように軽量にもかかわらず超強靭な多孔質架橋ポリマー超薄膜を開発。
- pH応答的に物質透過のon/offを制御できる抗菌・抗ウイルス性スマート分離膜。
- 導電性の多孔質炭素薄膜に容易に変換でき、超小型エネルギーデバイスに応用可能。
東京大学 大学院工学系研究科の伊藤 喜光 准教授と同大学 国際高等研究所 東京カレッジの相田 卓三 卓越教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター グループディレクターを兼任)らの研究チームは、過去最高の力学強度を持つ超軽量多孔質架橋超薄膜の開発に成功しました。これは、「多孔質超軽量ポリマーは力学強度が小さい」というこれまでの常識を覆すものです。開発した超薄膜は、市販の安価な原料を水に溶かし、その水溶液に電圧を2分間印加するだけで、厚さ70ナノメートルの欠陥のない大面積自立超薄膜が得られます。
この超薄膜は天然のヘチマスポンジに似た架橋構造を持ち、水溶液のpHに応答して物質透過のon/offを自動的に切り替え可能な抗菌・抗ウイルス性スマートろ過膜として使えます。また、蒸し焼きにすることで、エネルギーデバイスへの利用が可能な欠陥のない導電性多孔質炭素薄膜を作製できます。電極表面に生成した超薄膜は電圧を切ると電極表面から自発的に剥がれるので、ロール-to-ロール方式による大量生産が可能だと考えられます。超低密度な革新的軽量材料は、省資源・環境低負荷をキーワードに持続可能な未来を実現します。
本研究成果は、2025年7月4日付(日本時間)で「Science」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電場による非平衡反応場を利用した合成化学(課題番号:JPMJPR21Q1)」、日本学術振興会(JSPS) 科研費「基盤研究B(課題番号:21H01903)」、「特別推進研究(課題番号:23H05408)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(637KB)
<論文タイトル>
- “Electric double-layer synthesis of a sponge-like, lightweight reticular membrane”
- DOI:10.1126/science.adq0782
<お問い合わせ先>
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