名古屋大学,九州大学,京都大学,東京大学 国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN),理化学研究所,科学技術振興機構(JST),愛媛大学,国立健康危機管理研究機構

2025(令和7)年7月3日

名古屋大学
九州大学
京都大学
東京大学 国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)
愛媛大学
国立健康危機管理研究機構

エムポックス感染の拡大防止へ新たな指標

~血中ウイルス量で皮膚病変を予測、治療戦略に貢献~

ポイント

名古屋大学 大学院理学研究科の岩見 真吾 教授の研究グループは、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)/愛媛大学の三浦 郁修 博士および米国陸軍感染症研究所(USAMRIID)のPhillip R. Pittman(フィリップ・R・ピットマン) 博士らとの国際共同研究により、エムポックス(クレードIa)感染者における皮膚病変の症状進行に顕著な個人差があることを明らかにしました。また、発症時の血中ウイルス量がこれらの症状進行を予測する指標として有用である可能性を示しました。この成果により、感染初期段階で皮膚病変の今後の進行度を予測することが可能となり、現在流行中のエムポックスに対する治療戦略の改善に寄与することが期待されます。

本研究では、コンゴ民主共和国でエムポックス(クレードIa)感染者を対象に2007~2011年に集積された大規模な観察研究データを数理モデルにより解析し、病変の数や消失時間が異なる2グループに感染者を層別化できることを示しました。さらに、各患者の血液中のウイルス動態と病変消失時間の関係を分析し、病変発症時の血中ウイルス量がこれら2グループを予測する指標であることを明らかにしました。

2024年8月14日、WHOは2度目の「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。これは、より重症率が高いとされるクレードI(IaおよびIb)の感染者数がコンゴ民主共和国を中心に増加・拡大している状況を受け、国際的な流行リスクに警鐘を鳴らすための措置です。本研究は過去に発生したクレードIaの感染者のデータを用いた研究成果ですが、現在流行中のクレードIbに対しても同様のデータがあれば、皮膚病変の症状進行の予測可能性を評価できると考えられます。この知見は、治療戦略や介入政策を立案する上で重要な基盤となることが期待されます。

臨床的所見や経験則だけではなく、より客観的で定量的な判断基準を提供できるという意味において、本研究は、数理モデルと観察・臨床データに基づいた、世界的に求められている治療ガイドラインの確立にも貢献できると期待されます。

本研究成果は、2025年7月3日(日本時間)付で国際学術雑誌「Science Translational Medicine」に掲載されました。

本研究は、さまざまな感染症における超早期(未病)状態の推定に適用できる数理科学理論を開発する研究を推進する2021年度開始のJST ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標2「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」(JPMJMS2021、JPMJMS2025)、および2023年度開始のJST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「パンデミックに対してレジリエントな社会・技術基盤の構築」(JPMJPR23RA)の支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Modeling lesion transition dynamics to clinically characterize patients with clade I mpox in the Democratic Republic of the Congo”
DOI:10.1126/scitranslmed.ads4773

<お問い合わせ先>

(英文)“Using viral load tests to help predict mpox severity when skin lesions first appear”

前に戻る