理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 比較コネクトミクス研究チームの田坂 元一 上級研究員、宮道 和成 チームディレクターの研究チームは、マウスにおける母性養育行動の学習に重要な役割を果たす神経機構を明らかにしました。
本研究成果は、哺乳類母子間の愛着形成を支える神経基盤の理解を通じて、母子のウェルビーイング(心身および社会的な幸福)向上に貢献するものです。
未熟な新生仔(児)(しんせいし)を産む哺乳類にとって、養育行動は次世代の生存可能性を高めるために必須の本能行動です。この行動は出産前後から活発になるものの、その神経基盤は十分に理解されておらず、特に認知機能の中枢である大脳皮質前頭前野の役割は未解明でした。
本研究では、大脳皮質前頭前野の中でも眼窩(がんか)前頭皮質の第5層にある興奮性の神経細胞が養育行動時に活発に活動しており、これらの細胞の活動を阻害するとマウスの養育行動の学習が遅延することを見いだしました。さらに、眼窩前頭皮質の興奮性神経細胞は、脳の報酬系において中心的な役割を担う側坐核(そくざかく)へのドーパミンの放出を促進することにより、養育行動の動機付けに貢献することを発見しました。
本研究は、科学雑誌「Science Advances」オンライン版(日本時間7月3日付)に掲載されました。
本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 若手研究「養育行動を引き起こすマルチモダル感覚の統合機構とその可塑性(研究代表者:田坂 元一)」、同 基盤研究(B)「妊娠期における神経回路の再編による母体機能の制御(研究代表者:宮道 和成)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「養育行動を引き起こす多感覚統合機構の解明(研究代表者:田坂 元一)」による助成を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Orbitofrontal Cortex Influences Dopamine Dynamics Associated with Alloparental Behavioral Acquisition in Female Mice”
- DOI:10.1126/sciadv.adr4620
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