ポイント
- 大規模なグラフニューラルネットワーク(GNN)推論における大幅な高速化を可能にするスケーラブルなAIアクセラレーターを実現。
- GNN推論中の不規則メモリーアクセスをほぼ完全に解決し、計算コストを大幅に削減可能。
- 自動運転や広告推薦システムのようなリアルタイムかつ大規模なアプリケーションへの活用に期待。
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 AIコンピューティング研究ユニットの藤木 大地 准教授とJiale Yan(ジャロ・ヤン) ポスドク研究員(当時)らの研究チームは、大規模なグラフデータを効率的に処理できる新しいAIアクセラレーター「BingoGCN」を開発しました。
グラフニューラルネットワーク(GNN)は、人と人のつながりや道路網のような、複雑な関係性を表す「グラフデータ」を扱うのに優れたAI技術です。しかし、扱うデータが大きくなると、計算に必要な情報量が巨大になり、計算処理量・消費エネルギーが増大する課題がありました。
今回開発したBingoGCNは、この課題を解決するために、CMQとStrong Lottery Ticket(SLT)理論という2つの新しい技術を搭載しています。CMQは、グラフデータを小さな塊(パーティション)に分割して処理する際に、パーティション間でやり取りされる情報を「オンラインベクトル量子化」という技術で要約します。これにより、不規則なメモリーアクセスを大幅に減らし、処理の精度を保ちながら効率を向上させます。また、SLT理論ではAIモデルの計算に必要な「重み」と呼ばれるパラメーターを、必要な時に必要な分だけチップ上で生成します。これにより、メモリー使用量を削減し、計算効率を大幅に高めます。BingoGCNは、これらの技術を組み合わせることで、従来難しかった細かく分割されたグラフデータ上でも、高い効率でGNNの推論を行うことを可能にしました。
この成果は、ソーシャルネットワーク分析や自動運転など、私たちの身の回りのさまざまなサービスを支えるGNNの性能を飛躍的に向上させるものです。
本成果は、2025年6月21日~25日に東京で開催される計算機アーキテクチャ分野の最高峰会議である「International Symposium on Computer Architecture(ISCA ’25)」にて発表されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR22P7)、同事業 ALCA-Next(先端的カーボンニュートラル技術開発)(課題番号:JPMJAN24F3)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(課題番号:JP23H05489)などの支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.72MB)
<論文タイトル>
- “BingoGCN: Towards Scalable and Efficient GNN Acceleration with Fine-Grained Partitioning and SLT”
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
藤木 大地(フジキ ダイチ)
東京科学大学 総合研究院 AIコンピューティング研究ユニット 准教授
Tel:045-924-5658
E-mail:dfujikiartic.iir.isct.ac.jp
-
<JST事業に関すること>
櫻間 宣行(サクラマ ノリユキ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:prestojst.go.jp
-
<報道担当>
東京科学大学 総務企画部 広報課
申し込みフォーム:https://forms.office.com/r/F3shqsN7zY
Tel:03-5734-2975 Fax:03-5734-3661
E-mail:mediaadm.isct.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp