東京科学大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年6月20日

東京科学大学
科学技術振興機構(JST)

大規模グラフニューラルネットワーク推論性能の飛躍的向上

~不規則なメモリーアクセスの解消により、計算速度と効率化を両立~

ポイント

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 AIコンピューティング研究ユニットの藤木 大地 准教授とJiale Yan(ジャロ・ヤン) ポスドク研究員(当時)らの研究チームは、大規模なグラフデータを効率的に処理できる新しいAIアクセラレーター「BingoGCN」を開発しました。

グラフニューラルネットワーク(GNN)は、人と人のつながりや道路網のような、複雑な関係性を表す「グラフデータ」を扱うのに優れたAI技術です。しかし、扱うデータが大きくなると、計算に必要な情報量が巨大になり、計算処理量・消費エネルギーが増大する課題がありました。

今回開発したBingoGCNは、この課題を解決するために、CMQとStrong Lottery Ticket(SLT)理論という2つの新しい技術を搭載しています。CMQは、グラフデータを小さな塊(パーティション)に分割して処理する際に、パーティション間でやり取りされる情報を「オンラインベクトル量子化」という技術で要約します。これにより、不規則なメモリーアクセスを大幅に減らし、処理の精度を保ちながら効率を向上させます。また、SLT理論ではAIモデルの計算に必要な「重み」と呼ばれるパラメーターを、必要な時に必要な分だけチップ上で生成します。これにより、メモリー使用量を削減し、計算効率を大幅に高めます。BingoGCNは、これらの技術を組み合わせることで、従来難しかった細かく分割されたグラフデータ上でも、高い効率でGNNの推論を行うことを可能にしました。

この成果は、ソーシャルネットワーク分析や自動運転など、私たちの身の回りのさまざまなサービスを支えるGNNの性能を飛躍的に向上させるものです。

本成果は、2025年6月21日~25日に東京で開催される計算機アーキテクチャ分野の最高峰会議である「International Symposium on Computer Architecture(ISCA ’25)」にて発表されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR22P7)、同事業 ALCA-Next(先端的カーボンニュートラル技術開発)(課題番号:JPMJAN24F3)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(課題番号:JP23H05489)などの支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“BingoGCN: Towards Scalable and Efficient GNN Acceleration with Fine-Grained Partitioning and SLT”

<お問い合わせ先>

前に戻る