ポイント
- これまで不可能だった、高速流体のリアルタイムな計測と制御に成功。
- 感度の高い観測点の最適な組み合わせを選択して計測する手法「疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV)」とプラズマアクチュエーターを利用したシステムを構築。
- 2000ヘルツで高速な空気の流れをリアルタイム画像計測して行った流体制御の成功は世界初。
- 本技術を利用して、流体力学に限らずさまざまな分野でのリアルタイム観測とフィードバック制御への応用に期待。
空気や水など流体の速度場(速度分布)の計測は、現象の理解やその制御のために重要です。特に流体の中でリアルタイムに何が生じているかを把握し、制御することが期待されています。流体の流速の計測によく用いられる方法として、流速の面情報が得られる粒子画像流速計測法(PIV)がありますが、画像解析技術を基にした計測のため、高速な空気の流れでは解析に時間がかかり、リアルタイムな計測と制御ができませんでした。
名古屋大学 大学院工学研究科の野々村 拓 教授らの研究グループは、この課題を解決するため、2023年に「低次元モデル」と「センサー位置最適化技術」を組み合わせた疎点解析粒子画像流速計測法(スパースプロセッシングPIV)を実証しました。
本研究ではこのシステムに、電気的な入力で遅れなく反応して誘起流れを生成するプラズマアクチュエーターを組み合わせ、機械学習によるモデル化と先端の制御アルゴリズムを利用することで、2000ヘルツでのリアルタイム流体制御を実現しました。
本研究で利用したスパースプロセッシングPIVには汎用性があります。低次元モデルと最適化を組み合わせることで、画像解析などを伴う時間がかかる計測手法に対し解析データの量を減らして処理時間を短縮できることから、流体力学にとどまらずさまざまな分野でのリアルタイム計測とそれに基づく制御が可能になると期待されます。
本研究成果は、2025年6月16日付(現地時間)で国際学術論文誌「Experiments in Fluids」に掲載されました。
本研究は、2021年度から始まった科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR202C)の支援のもとで行われたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.12MB)
<論文タイトル>
- “Real-time feedback control of flow velocity field using sparse processing particle image velocimetry and plasma actuators”
- DOI:10.1007/s00348-025-04039-4
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
野々村 拓(ノノムラ タク)
名古屋大学 大学院工学研究科 教授
Tel:052-789-3395 Fax:052-789-3395
E-mail:nonomuranagoya-u.jp
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<JST事業に関すること>
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<報道担当>
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