ポイント
- ガラスなどの加工の難しい材料を、従来の100万倍高速で、なおかつ超精密に加工できる手法を開発しました。
- ピコ秒(10のマイナス12乗秒)という極短時間だけ材料の物性を変化させることで、加工効率が劇的に向上することを発見しました。
- 次世代型半導体において、ガラス基板への微細加工技術の確立が急務となっています。本技術により、半導体産業の飛躍的な進展が期待されます。
東京大学 大学院工学系研究科の伊藤 佑介 講師らとAGC株式会社による研究グループは、従来の100万倍高速かつ超精密に、ガラスなどの透明材料を加工できる手法を開発しました。
次世代の半導体において、ガラス基板への微細加工技術が求められています。しかし、加工速度の著しい低さと、精密加工の難しさが、ガラス基板の実用化の大きな障壁となっていました。本研究では、時間・空間分布を制御した光を照射することで、ピコ秒(10のマイナス12乗秒)という極短時間のみ物性を劇的に変えることができ、超高速かつ超精密な加工が実現することを明らかにしました。さらに、この加工は、従来のフェムト秒レーザーよりも4桁低い出力のレーザーによって実現できるため、加工装置の低価格化や消費エネルギーの大幅な削減も期待できます。本研究は、半導体産業の飛躍的な進展に貢献するとともに、材料特性を瞬間的に変化させるという新たな概念を提示することで、製造業界にパラダイムシフトをもたらすことが期待されます。
本研究成果は、2025年6月11日(米国東部夏時間)に「Science Advances」に掲載されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR22Q1)、JSPS 科研費 基盤研究B(課題番号:21H01224)、挑戦的研究・萌芽(課題番号:21K18667)、特別研究員奨励費(課題番号:22F22360)、天田財団 奨励研究助成(課題番号:AF-2023236-C2)の支援を受けました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(489KB)
<論文タイトル>
- “Ultra-high-speed laser drilling of transparent materials via transient electronic excitation”
- DOI:10.1126/sciadv.adv4436
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
伊藤 佑介(イトウ ユウスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 講師
Tel:03-5841-6334
E-mail:y.itomfg.t.u-tokyo.ac.jp
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
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E-mail:prestojst.go.jp
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<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
Tel:03-5841-0235
E-mail:kouhoupr.t.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
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