ポイント
- シリコンチップ上で、これまでに利用されていなかった次元「光導波路多重」を用いて、光による行列-ベクトル乗算を実行する光プロセッサーを実現。
- シンプルなシステム構成でありながら、大規模集積が可能なチップ構造を実証。
- 光導波路多重に加えて、従来の波長・モードの次元を組み合わせることで、AIに向けた超並列光行列演算回路の実現が期待される。
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻の竹中 充 教授、唐 睿 特任助教(研究当時)、トープラサートポン・カシディット 准教授、高木 信一 教授(研究当時)、および産業技術総合研究所 光電融合研究センター 光電子集積デバイス研究チームの岡野 誠 上級主任研究員らの研究グループは、次世代AIアクセラレーターに向けて行列-ベクトル乗算を加速できる新しい光プロセッサーを開発しました。
AI演算を加速する光プロセッサーの研究は、現在世界的に大きな注目を集めています。従来の方式では、光の波長やモードなどの自由度を利用して、光による行列-ベクトル乗算が実証されてきましたが、光信号の大きな減衰や信号同士の干渉などの問題により、大規模な光回路の実現には限界がありました。本研究では、複数の光導波路内の光信号を直接加算できる多ポート光検出器を世界で初めて開発・実装しました。これにより、これまでに利用されていなかった次元である「光導波路多重」の活用が可能となり、シンプルなチップ構成でありながら高いスケーラビリティー(拡張性)を持つ光行列演算回路の実証に成功しました。この成果は、光技術を活用した次世代AIプロセッサーの実現に向けて、高速かつ省電力なハイブリッド演算アーキテクチャーの確立に大きく貢献するものと期待されます。
本成果は、2025年6月4日(米国東部夏時間)に米国学術誌「Optica」のオンライン版にて公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR2004)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 若手研究(課題番号:22K14298)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(557KB)
<論文タイトル>
- “Waveguide-multiplexed photonic matrix-vector multiplication processor using multiport photodetectors”
- DOI:10.1364/OPTICA.552023
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
竹中 充(タケナカ ミツル)
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授
Tel:03-5841-6786
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
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E-mail:crestjst.go.jp
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<報道担当>
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Tel:03-5841-0235
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産業技術総合研究所 ブランディング・広報部 報道室
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科学技術振興機構 広報課
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