富山大学,科学技術振興機構(JST),獨協医科大学,北海道大学,沖縄科学技術大学院大学

令和7年4月28日

富山大学
科学技術振興機構(JST)
獨協医科大学
北海道大学
沖縄科学技術大学院大学

脳が未来の記憶に備える重要なプロセスを発見

~睡眠は単なる休息ではない~

ポイント

富山大学 学術研究部医学系 生化学講座の井ノ口 馨 卓越教授とKhaled Ghandour(カレド・ガンドウル) 特命助教らのグループは、過去の記憶の保存と未来の記憶への準備という2つのプロセスが、睡眠中に並行して進行していることを初めて明らかにしました。

本研究グループは、自由行動下のマウスの脳内で「記憶を担う神経細胞集団(エングラム細胞集団)」とそれ以外の細胞の活動を光で観測する技術を使い、脳の海馬中にあるエングラム細胞集団が、新しい出来事や経験を記憶する前の睡眠中の段階ですでに準備されて活動している様子の観察に成功しました。さらに、未来の記憶のために準備されているエングラム予備細胞集団は、前の記憶直後の睡眠中にエングラム細胞以外の細胞から出現し、前の記憶を担っているエングラム細胞集団と同時に活動することが分かりました。このことから、エングラム予備細胞の出現には前の記憶が影響していることが推測されます。続いて、エングラム予備細胞集団が出現するメカニズムを調べるために、神経回路モデルによるシミュレーションを行いました。この結果、エングラム予備細胞集団が出現するためには、前の記憶のエングラム細胞の再活動の影響を受けてエングラム細胞以外の細胞で起こる睡眠中のシナプスの変化が重要であることが提唱されました。以上の結果は、睡眠は単なる休息ではなく、睡眠中の脳は「舞台裏で」積極的に働いており、過去の記憶を定着しつつ、未来の記憶に備えるという2つの役割を果たしていることを示しています。

本研究は、情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センターの芳賀 達也 研究員、獨協医科大学の大川 宜昭 准教授、香港城市大学のChi Chung Alan Fung(チー・チャン・アラン・ファン) 助理教授、北海道大学の佐藤 正晃 講師(現 京都工芸繊維大学 教授)、沖縄科学技術大学院大学の深井 朋樹 教授らと共同で行われたものです。

本研究成果は、2025年4月28日(月)(日本時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版に掲載されます。

本成果は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR23N2)によって得られました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Parallel processing of past and future memories through reactivation and synaptic plasticity mechanisms during sleep”
DOI:10.1038/s41467-025-58860-w

<お問い合わせ先>

(英文)“Elucidating the Double Duty of Sleep in Memory Processing”

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