東京科学大学,科学技術振興機構(JST),東北大学

令和7年4月7日

東京科学大学
科学技術振興機構(JST)
東北大学

室温に近い温度でスルフィドからスルホンを選択的に合成

~高性能な六方晶ペロブスカイト酸化物ナノ粒子触媒を開発~

ポイント

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 フロンティア材料研究所の鎌田 慶吾 教授と和知 慶樹 特任助教、東北大学 金属材料研究所の熊谷 悠 教授らの研究チームは、マンガン(Mn)、ストロンチウム(Sr)、ルテニウム(Ru)を組み合わせたペロブスカイト酸化物が、酸素分子(O)のみを酸素源として、硫黄化合物であるスルフィドを有用なスルホンへと効率的に変換できることを発見しました。

酸素分子を酸化剤とするスルフィド酸化は高難度反応の1つであり、新しい固体触媒の設計と開発が切望されていました。特に、スルフィドからスルホンへの酸化では、酸素分子を触媒表面で活性化し、スルフィドの硫黄原子へ2つの酸素原子を効率的に移動させる必要があります。従来の触媒では、スルホンを選択的に合成するためには80度から150度程度の高温や多量の貴金属を必要とすることが課題でした。

本研究では、面共有酸素構造を持つ六方晶ペロブスカイトSrMnOに着目し、Ruを少量添加(ドープ)したナノ粒子触媒(SrMn1−xRu)を設計しました。その結果、本触媒は室温に近い30度でスルフィドを選択的にスルホンへと酸化することを見いだしました。Ruをわずか1パーセントドープしただけでも触媒性能が飛躍的に向上するため、貴金属の使用量を大幅に削減することに成功しました。また、実験化学と第一原理計算を駆使したアプローチによって、RuドープがMnを架橋する面共有酸素の反応性を増大させ、高効率なスルフィド酸化を実現する反応メカニズムを明らかにしました。本研究は、結晶構造の制御と多元素化の組み合わせにより、高性能な酸化物触媒を設計するための重要な指針を示します。

本研究成果は、2025年4月3日付(現地時間)で米国Wiley社「Advanced Functional Materials」に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(課題番号24H00393)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号JPMJCR22O1)、文部科学省 国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出プロジェクトの支援のもと実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Oxygen Defect Engineering of Hexagonal Perovskite Oxides to Boost Catalytic Performance for Aerobic Oxidation of Sulfides to Sulfones”
DOI:10.1002/adfm.202425452

<お問い合わせ先>

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