京都大学 大学院工学研究科 高分子化学専攻の西川 剛 助教、鈴木 宏史 博士後期課程学生、大内 誠 教授のグループは、1次構造が多重制御されたポリビニルアルコール(PVA)の合成手法を開発しました。
PVAは医療材料や偏光フィルムといった先端機能材料から身近な接着剤・洗濯のりまでさまざまな用途に用いられる重要な高分子であり、近年ではその分解性にも注目が集まっています。PVAは炭化水素主鎖に水酸基側鎖が直結した構造を持ち、水酸基の親水性、水素結合性などが物性や機能において重要な役割を果たします。分子量・分岐構造・立体規則性などの1次構造を多重に制御できれば、水酸基の周辺環境の違いに依存したPVA特性の変化が期待され、さらなる用途拡大や高機能化(例:目的に応じた水溶性・耐水性の制御や力学物性の向上など)につながります。本研究では、独自に研究を進めてきたホウ素を持つモノマーの分子設計に基づいてラジカル重合における立体規則性を制御し、重合後にホウ素側鎖を水酸基に変換することで、立体規則性が制御されたPVAの合成を達成しました。また、分子内連鎖移動による分岐生成も抑制可能であり、分子量制御や異種ポリマーとのブロックコポリマー化も実現しました。これら1次構造を多重に制御したPVAは特徴的な結晶性を示しました。
本研究成果は、2025年4月4日(現地時間)に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) さきがけ(JPMJPR23N6)、同 CREST(JPMJCR23L1)、文部科学省 科学研究費助成事業(22K14724、23KJ1374、24H00052)、戸部眞紀財団(23-JA-001)の支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.44MB)
<論文タイトル>
- “Design of Vinylboron Monomers for the Comprehensive Structural Control of Poly(vinyl alcohol)s via Stereospecific Controlled Radical Polymerization and Subsequent Side-Chain Replacement”
- DOI:10.1021/jacs.5c00336
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