ポイント
- 独自に開発した電子線分光技術を用いて、有機材料中の水素と重水素の分布を、3ナノメートルという極めて高い空間分解能でイメージングすることに成功しました。
- 計算科学との融合により、高分子科学における長年の未解決課題であったレプテーションモデルの実証に近づく重要な手掛かりを得ました。
- 本手法は、これまで観測が困難だった有機材料内部の化学結合や化学物質の空間分布を精密に特定できる新しいイメージング技術です。より高性能かつ高機能な材料の開発に向けた新たな指針を提供すると期待されます。
プラスチックや有機半導体など高機能有機材料の特性を精緻に制御するには、材料内部の微細構造を分子レベルで解明することが不可欠です。しかし、これまで有機材料中の化学結合や分子の位置を分子レベルで特定できる技術がありませんでした。
東北大学 多元物質科学研究所の陣内 浩司 教授と宮田 智衆 講師ら、産業技術総合研究所 ナノ材料研究部門の千賀 亮典 主任研究員、大阪大学 産業科学研究所の末永 和知 教授、防衛大学校 応用物理学科の萩田 克美 講師のグループは、電子線による分子振動マッピング法を独自に開発し、炭素に対する水素と重水素の化学結合の違いを見分けることで、有機材料中に存在する重水素標識分子の空間分布を3ナノメートルの分解能でイメージングすることに成功しました。本技術により、有機材料の精密な構造解析が可能となり、高性能かつ高機能な材料の開発が加速すると期待できます。
本研究成果は、2025年3月24日(英国時間)に、科学誌「Nature Nanotechnology」に公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR1993、JPMJCR20B1)、同 さきがけ(JPMJPR2009)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(JP21H05235、JP22H00329、JP23H00277)、European Research Council “MORE-TEM”の助成を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Nanoscale C-H/C-D mapping of organic materials using electron spectroscopy”
- DOI:10.1038/s41565-025-01893-5
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
陣内 浩司(ジンナイ ヒロシ)
東北大学 多元物質科学研究所 教授
Tel:022-217-5329
E-mail:hiroshi.jinnai.d4tohoku.ac.jp
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<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
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<報道担当>
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
Tel:022-217-5198
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産業技術総合研究所 ブランディング・広報部 報道室
Tel:029-862-6216
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大阪大学 産業科学研究所 広報室
Tel:06-6879-8524
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