東京科学大学,東京大学 大学院理学系研究科,科学技術振興機構(JST)

令和7年3月18日

東京科学大学
東京大学 大学院理学系研究科
科学技術振興機構(JST)

遊泳バクテリアの群れ運動がカオス的流動に至る道筋を解明

~集団運動の制御でアクティブ流体デバイスなどの設計に貢献~

ポイント

東京科学大学(Science Tokyo) 理学院 物理学系の西口 大貴 准教授(研究当時:東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻 助教、現:同 客員研究員)、東京大学 大学院理学系研究科の白谷 空 大学院生、竹内 一将 准教授、米国 ペンシルバニア州立大学のイゴール・S・アランソン(Igor S.Aranson) 教授(研究当時:東京大学 大学院理学系研究科 GSGC 教授 兼任)らの研究チームは、高密度の遊泳バクテリア懸濁液で見られる集団運動状態が、乱れた時空カオス的な流動を示すアクティブ乱流状態へと至る道筋を解明しました。

高密度の遊泳バクテリア懸濁液では、渦が多く存在し、時空カオス的な流動を示す集団運動状態であるアクティブ乱流が生じます。このバクテリア懸濁液を小さな円形領域内に閉じ込めると、一方向に安定して回転する定常な渦を形成します。本研究では、この円形領域の半径が大きくなるにつれてアクティブ乱流へ至る過程において、まず定常な渦が乱れるとともに渦の回転方向が周期的に反転することを発見しました。また、そうした観測結果を数値計算と解析的理論からも検証し、整合性のある結果を得ました。

本研究では、群れのカオス的な運動に幾何学的な制約を課すことで安定な渦構造へと変換し、さらにその渦構造を周期的に反転する状態へと変換する方法を解明しました。こうした理論は、バクテリア集団だけでなく、培養細胞や他の自己駆動コロイドなどの集団にも普遍的に適用できるため、新たなアクティブ流体デバイスなどの設計指針となると期待されます。

本成果は、2025年3月14日付(現地時間)の「Proceedings of National Academy of Science(米国科学アカデミー紀要)」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(西口 大貴:JPMJPR21O8)、同 創発的研究支援事業(竹内 一将:JPMJFR2364)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(西口 大貴:JP19H05800、JP20K14426、JP23K25838、白谷 空:JP24KJ0890、竹内 一将:JP19H05800、JP24K00593)、同 先端拠点事業 “Advanced core-to-core network for the physics of self-organizing active matter(JPJSCCA20230002)”、アメリカ国立科学財団(Igor S.Aranson:PHY-2140010)による支援を受けています。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Vortex reversal is a precursor of confined bacterial turbulence”
DOI:10.1073/pnas.2414446122

<お問い合わせ先>

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