東京科学大学,大阪大学,東京大学,科学技術振興機構(JST)

令和7年3月5日

東京科学大学
大阪大学
東京大学
科学技術振興機構(JST)

植物に学ぶ触媒デザインで酸素発生触媒の高性能化に成功

~人工光合成の実現に向けた金属錯体ポリマー材料の開発~

ポイント

東京科学大学(Science Tokyo) 理学院化学系の近藤 美欧 教授と小杉 健斗 助教、大阪大学 大学院工学研究科 大学院生の松﨑 拓実さん(博士前期課程・当時)と正岡 重行 教授らの共同研究チームは、東京大学 物性研究所の木内 久雄 助教と原田 慈久 教授、産業技術総合研究所の研究チームと共同で、植物をヒントに、(1)身の回りに豊富に存在する鉄イオンを持ち、(2)水溶液中で駆動可能で、(3)高い耐久性と反応速度を示す酸素発生触媒を得ることに初めて成功しました。

エネルギー・環境問題を背景に、人工光合成技術の開発に期待が集まっています。特に、水の酸化による酸素発生反応(酸素発生反応)は人工光合成におけるボトルネックとされ、この反応に対する良好な触媒の開発が望まれています。

本研究では、金属錯体を用いたポリマー型酸素発生触媒材料の開発を行いました。植物の中に存在する天然の酸素発生触媒をヒントに、「多核金属錯体からなる活性中心」と「活性中心の周りの電荷伝達サイト」を含む触媒を開発しました。この触媒材料は、高い選択性で酸素発生反応を促進し、長時間にわたり安定で、繰り返しの利用も可能でした。さらに、その触媒能を関連する触媒と比較すると、その触媒回転数が、10倍近く向上していることが分かりました。

この成果は、人工光合成の発展に寄与するとともに、光合成系機能の人工的再現を達成したという意味で重要です。同様の材料開発戦略により、水の酸化反応以外の人工光合成に関わるさまざまな反応に対する高性能な触媒材料が得られ、人工光合成の実現に向けて大きく貢献できると期待されます。

本研究成果は、2025年3月5日付(英国時間)の「Nature Communications」誌に掲載されます。

本研究は、以下の支援を受けて行われました。

  • ・JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「金属錯体触媒の精密配列に基づく反応場の自在構築と正と負の触媒効果」(JPMJPR20A4)
  • ・JST 創発的研究支援事業「革新的物質変換に向けた協奏的機能統合戦略」(JPMJFR221S)
  • ・JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「金属原子配列構造の超精密制御に基づく分子ナノメタリクスの創成」(JPMJCR20B6)
  • ・科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「超セラミックス」(22H05145、23H04628)
  • ・科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「グリーン触媒」(23H04903)
  • ・科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「化学構造リプロ(SReP)」(24H02212)

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Iron-Complex-Based Catalytic System for High-Performance Water Oxidation in Aqueous Media”
DOI:10.1038/S41467-025-57169-Y

<お問い合わせ先>

(英文)“A Sustainable Iron Catalyst for Water Oxidation in Renewable Energy”

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