京都大学,日本原子力研究開発機構,J-PARCセンター,高エネルギー加速器研究機構,科学技術振興機構(JST)

令和7年2月15日

京都大学
日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構
科学技術振興機構(JST)

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料

~高吸水性高分子の特性を活かした自己組織化~

京都大学 大学院工学研究科 高分子化学専攻の寺島 崇矢 准教授、堀池 優貴 修士課程学生、大内 誠 教授らのグループは、アクリル酸ナトリウムをベースとする汎用的な共重合体を用いて、水を含み湿度に応答するラメラ構造を持つポリマー(高分子)材料の創出に成功しました。

寺島 准教授らのグループでは、親水性と疎水性の側鎖を持つランダム共重合体が側鎖の集合により10ナノメートル以下のミクロ相分離構造を形成することを見いだしてきました。アクリル酸ナトリウムは、紙おむつなどに使われる高吸水性高分子の原料であり、水をよく吸う親水性基としての機能が期待されます。そこで、この特徴に着目して、アクリル酸ナトリウムと疎水性アルキルアクリレートのランダム共重合体を合成し、ミクロ相分離挙動を調べたところ、この共重合体は、外部環境から効率的に水を吸収し、水を含む親水性層と油の性質を持つ疎水性層が交互に配列したラメラ構造を形成することを見いだしました。さらにこの共重合体は、湿度に応じて可逆的に水を吸収・放出する性質を持ち、それに伴いラメラ構造の間隔が1ナノメートル以下のレベルで拡大・縮小する特徴を示しました。また、日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター/高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の青木 裕之 研究主幹/特別教授との共同研究により、湿度環境においてラメラ層間に水が吸収され、それと同時にラメラ構造が形成されることを明らかにしました。このラメラ構造ポリマーは、水を含んだ状態で柔軟な膜になり、湿度に応答して可逆的に形態が変化するフィルム材料として応用できることも分かりました。今後、水を含む親水性層を生かしたさまざまな機能材料への展開が期待されます。

本研究成果は、2025年2月14日に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されます。

本研究は、以下の研究プロジェクトの助成を受けて推進しました。

●JST さきがけ

資源循環をプログラムした自己組織化ポリマー材料の創成
寺島 崇矢
JPMJPR24M6

●科研費 基盤研究B

両親媒性高分子の側鎖集合が拓く制御自己組織化システム
寺島 崇矢
23H02008、23K26701

●科研費 新学術領域研究

環境に応答して自己組織化する水圏機能ポリマーミセル材料の創成
寺島 崇矢
22H04539

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Water-Intercalated and Humidity-Responsive Lamellar Materials by the Self-Assembly of Sodium Acrylate Random Copolymers”
DOI:10.1021/jacs.4c16219

<お問い合わせ先>

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