ポイント
- シクロヘキサノンなどの脂肪族化合物から有用なフェノールなどの芳香族化合物とエネルギー源となる水素分子を同時に作ることのできる、再使用可能なニッケルナノ粒子触媒を開発。
- これまでパラジウムなどの高価な貴金属触媒が必要であったが、ナノ粒子触媒特有の協奏的触媒作用を巧みに利用することで、世界で初めて非貴金属固体触媒で本反応を実現。
- 酸化剤や添加剤を一切用いずに、安価で豊富に存在する非貴金属触媒により有用な芳香族化合物と水素分子が得られるため、従来の環境負荷の大きい化学プロセスを地球環境に調和したプロセスに置き替え、持続可能な世界の実現に貢献することが期待される。
東京大学 大学院工学系研究科の谷田部 孝文 助教、山口 和也 教授、矢部 智宏 助教、松山 剛大 大学院生らによる研究グループは、世界で初めて非貴金属固体触媒のみを用いて、シクロヘキサノンなどの脂肪族化合物から有用な芳香族化合物とエネルギー源となる水素の同時合成に成功しました。本研究では、これまでのニッケル錯体触媒におけるボトルネックを解消するため、一般的に有機反応開発で用いられる均一系金属錯体触媒とは異なる、不均一系担持金属ナノ粒子触媒特有の協奏的触媒作用に着目し、酸化セリウム担持ニッケルナノ粒子触媒を開発しました。これにより、酸化剤を用いずに、シクロヘキサノンなどの脂肪族化合物を基質としたさまざまな芳香族化合物への脱水素芳香環形成反応をニッケル触媒で初めて達成しました。安価で地球に豊富に存在する再使用可能な非貴金属触媒により有用な芳香族化合物と水素分子を得る環境調和型反応を達成しており、持続可能な世界の実現に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年2月7日(英国時間)付で「Nature Communications」に掲載されます。
本研究は、科研費「特別研究員奨励費(課題番号:23KJ0669)」、「基盤研究(S)(課題番号:22H04971)」、「若手研究(課題番号:21K14460)」、JST「さきがけ(課題番号:JPMJPR227A)」、NEDO 官民による若手研究者発掘支援事業の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Ni-catalysed acceptorless dehydrogenative aromatisation of cyclohexanones enabled by concerted catalysis specific to supported nanoparticles”
- DOI:10.1038/s41467-025-56361-4
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
谷田部 孝文(ヤタベ タカフミ)
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 助教
Tel:03-5841-8712
E-mail:yatabeappchem.t.u-tokyo.ac.jp
山口 和也(ヤマグチ カズヤ)
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 教授
Tel:03-5841-7197
E-mail:kyamaappchem.t.u-tokyo.ac.jp
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<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:prestojst.go.jp
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<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
Tel:03-5841-0235
E-mail:kouhoupr.t.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
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