愛媛大学,慶應義塾大学,科学技術振興機構(JST)

令和7年2月5日

愛媛大学
慶應義塾大学
科学技術振興機構(JST)

がん治療の新たな鍵、SLFN11たんぱく質の働きを解明

~精密医療(プレシジョンメディシン)への応用に期待~

愛媛大学 プロテオサイエンスセンターの村井 純子 准教授らの研究グループは、がん化学療法の効果を高める重要なたんぱく質「SLFN11(シュラーフェンイレブン)」の働きを明らかにしました。がん化学療法は、多くの患者に用いられる治療法ですが、その効果には個人差があり、治療を始める前に薬が効くかどうかを予測するのは難しいのが現状です。最近の研究で、SLFN11というたんぱく質を多く持つがん細胞では化学療法がよく効くことが分かってきましたが、その具体的な仕組みについては謎が多く残されていました。

今回の研究では、SLFN11が薬剤投与中にがん細胞を「アポトーシス」(細胞の自然な死のプロセス)へと導く仕組みを発見しました。 SLFN11の検出は、一般病院で広く行われている病理検査を利用することで可能です。このたんぱく質は、がんの種類によりますが、約半分のがんで検出されます。このため、今回の発見により、がん治療における「精密医療(プレシジョンメディシン)」(患者個々のがん特性に合わせた治療)が、従来の一部の治療薬だけでなく、広く化学療法でも実現できる可能性が開かれました。

本研究成果は、世界的に権威のある米国学術誌「Molecular Cell」に2025年2月5日(日本時間)に掲載されます。

本研究は、以下の助成を受けて行われました。

  • ・JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2056、村井 純子)
  • ・科研費 基盤研究(B)(JP19H03505、JP23H02768、村井 純子)
  • ・科研費 挑戦的研究(萌芽)(JP21K19415、村井 純子)
  • ・科研費 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))(21KK0156、棗田 学)
  • ・科研費 学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)AdAMS(22H04922、旦 慎吾、村井 純子)
  • ・新潟大学脳研究所 共同利用・共同研究(2023-23021、棗田 学、岡田 正康、村井 純子)
  • ・京都大学 大学院生命科学研究科 附属放射線生物研究センター 共同利用・共同研究CORE Program(小林 純也、村井 純子)
  • ・武田科学振興財団(北島 正二朗)
  • ・山形研究費(小川 茜、森 大、渡部 素世香、田中 聡一郎、北島 正二朗、村井 純子)

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“SLFN11-mediated ribosome biogenesis impairment induces TP53-independent apoptosis”
DOI:10.1016/j.molcel.2025.01.008

<お問い合わせ先>

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