ポイント
- 中心小体は、細胞分裂で中心的な役割を果たす細胞小器官です。その結合と分離に関する段階的プロセスを詳細に解明しました。
- 中心小体の複製周期と細胞周期との連携メカニズムについて、初めて包括的な理解を提示しました。
- がんにおける中心小体の異常増加の原因解明や、新たな治療法への応用が期待されます。
東京大学 大学院薬学系研究科の伊藤 慶 特任研究員(研究当時)、畠 星治 特任講師、北川 大樹 教授、東京大学 大学院医学系研究科の坂本 寛和 助教らの研究グループは、ミクロな細胞内構造「中心小体」の形成サイクルを詳細に解明しました。
中心小体は、細胞分裂時に紡すい体の極を形成する細胞小器官「中心体」の核となる構造です。直径200ナノメートル、長さ400ナノメートル程度の微小な円筒状の構造であり、細胞周期ごとに一度、既存の中心小体(母中心小体)の側面で新しい中心小体(娘中心小体)が形成されます。新たに形成された娘中心小体は、細胞分裂が完了すると母中心小体から分離し、次の細胞周期では独立した中心体の核として機能します。しかし、この「娘」が「母」とどのように結び付いており、どのように分離に至るのかは、これまで明らかにされていませんでした。
本研究では、母中心小体と娘中心小体が3つの異なる分子メカニズムによって互いに結合していることを初めて明らかにしました。さらに、膨張顕微鏡法(Expansion Microscopy)を用いた高解像度観察により、細胞周期に伴う娘中心小体の段階的な成熟過程と、成熟に伴い母中心小体からの結合が1つずつ外されていくプロセスを解明しました。がんにおける中心小体の異常増加の原因解明や、新たな治療法への応用が期待されます。
本研究成果は、2025年2月4日付(現地時間)で国際学術誌「The EMBO Journal」に掲載されます。
本研究は、JSPS 科研費(課題番号:18K06246、19H05651、20K15987、20K22701、21H02623、22H02629、22K20624、23K14176、23H02627、24K02174、24H02284)、JST さきがけ(課題番号:JPMJPR21EC)、JST CREST(課題番号:JPMJCR22E1)、武田科学振興財団、上原記念生命科学財団、薬学研究奨励財団、小柳財団、かなえ医薬振興財団、加藤記念バイオサイエンス振興財団、内藤記念科学振興財団、中島記念国際交流財団、住友財団、稲盛財団、アステラス病態代謝研究会などからの支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(396KB)
<論文タイトル>
- “Multimodal mechanisms of human centriole engagement and disengagement”
- DOI:10.1038/s44318-024-00350-8
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