東京大学医科学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和7年1月27日

東京大学医科学研究所
科学技術振興機構(JST)

リソソームRNAストレスが自然免疫を活性化し、肝障害を抑制するメカニズムを解明

~新たな肝疾患治療や臓器保護戦略の開発に期待~

ポイント

東京大学医科学研究所 感染遺伝学分野の三宅 健介 教授と佐藤 亮太 助教らによる研究グループは、リソソームRNAストレスがTLRの活性化を介して肝臓保護作用を誘導することを明らかにしました。

リソソーム内でRNAを分解する酵素RNaseT2の欠損マウスを用いた研究により、腸内細菌由来のRNA(rRNA:リボソームRNA)がTLR13を活性化し、脾臓や肝臓でのマクロファージ蓄積を促進することが分かりました。

TLR13は、脾臓ではマクロファージの増殖と抗炎症性サイトカインIL-10の分泌を誘導し、肝臓では単球を組織保護型クッパー細胞へと成熟させることが示されました。また、このクッパー細胞は炎症応答を抑えるとともに、組織修復分子の発現を高め、肝障害に対する耐性を示しました。

これらの発見は、リソソームRNAストレスによって活性化されたTLR13が、組織保護型クッパー細胞の補充を促進する重要な役割を果たしていることを示唆しています。本研究は、マクロファージのストレス応答と臓器保護の新たなメカニズムを解明し、肝疾患の治療に向けた新たな可能性を提示しています。

本研究成果は、2025年1月24日(現地時間)に、米国医学雑誌「Journal of Experimental Medicine」オンライン版で公開されました。

本研究は、科研費(課題番号:JP 21H04800、JP 22H05184、JP 22K19424、JP 22H05182、24K22045、JP 19K16685、JP 21K15464、24K10255)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR21E4)、「持田記念医学薬学振興財団」、「第一三共生命科学研究振興財団」、「武田科学振興財団」「上原記念生命科学財団」の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“RNaseT2-deficiency promotes TLR13-dependent replenishment of tissue-protective Kupffer cells”
DOI:10.1084/jem.20230647

<お問い合わせ先>

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