ポイント
- リソソーム内でRNAを分解する酵素RNaseT2の欠損によるリソソームRNAストレスが、病原体を認識する受容体TLR13を活性化し、臓器マクロファージの蓄積を誘導するメカニズムを、マウスを用いた研究により解明しました。
- TLR13が活性化することにより、哺乳類の体内で脂質の恒常性を調節するLXRが活性化された組織保護型クッパー細胞が肝臓で成熟および増殖することや、脾臓(ひぞう)で抗炎症性IL-10を発現するマクロファージの増殖を促進することを示しました。
- 本研究は、TLRを介した急性肝障害の耐性メカニズムを明らかにしており、新たな肝疾患治療法や組織保護を促進する戦略の開発につながる可能性があります。
東京大学医科学研究所 感染遺伝学分野の三宅 健介 教授と佐藤 亮太 助教らによる研究グループは、リソソームRNAストレスがTLRの活性化を介して肝臓保護作用を誘導することを明らかにしました。
リソソーム内でRNAを分解する酵素RNaseT2の欠損マウスを用いた研究により、腸内細菌由来のRNA(rRNA:リボソームRNA)がTLR13を活性化し、脾臓や肝臓でのマクロファージ蓄積を促進することが分かりました。
TLR13は、脾臓ではマクロファージの増殖と抗炎症性サイトカインIL-10の分泌を誘導し、肝臓では単球を組織保護型クッパー細胞へと成熟させることが示されました。また、このクッパー細胞は炎症応答を抑えるとともに、組織修復分子の発現を高め、肝障害に対する耐性を示しました。
これらの発見は、リソソームRNAストレスによって活性化されたTLR13が、組織保護型クッパー細胞の補充を促進する重要な役割を果たしていることを示唆しています。本研究は、マクロファージのストレス応答と臓器保護の新たなメカニズムを解明し、肝疾患の治療に向けた新たな可能性を提示しています。
本研究成果は、2025年1月24日(現地時間)に、米国医学雑誌「Journal of Experimental Medicine」オンライン版で公開されました。
本研究は、科研費(課題番号:JP 21H04800、JP 22H05184、JP 22K19424、JP 22H05182、24K22045、JP 19K16685、JP 21K15464、24K10255)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR21E4)、「持田記念医学薬学振興財団」、「第一三共生命科学研究振興財団」、「武田科学振興財団」「上原記念生命科学財団」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(743KB)
<論文タイトル>
- “RNaseT2-deficiency promotes TLR13-dependent replenishment of tissue-protective Kupffer cells”
- DOI:10.1084/jem.20230647
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
三宅 健介(ミヤケ ケンスケ)
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 感染遺伝学分野 教授
Tel:03-5449-5293
E-mail:kmiyakeimsg.ecc.u-tokyo.ac.jp
佐藤 亮太(サトウ リョウタ)
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 感染遺伝学分野 助教
Tel:03-5449-5293
E-mail:r-hopperg.ecc.u-tokyo.ac.jp
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<JST事業に関すること>
沖代 美保(オキシロ ミホ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3524 Fax:03-3222-2064
E-mail:crestjst.go.jp
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<報道担当>
東京大学医科学研究所 プロジェクトコーディネーター室(広報)
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