大阪公立大学,科学技術振興機構(JST)

令和7年1月24日

大阪公立大学
科学技術振興機構(JST)

標的核酸分子をレーザー照射で濃縮

~一滴の試料から1000兆分の1グラムの超微量DNAを5分で検出~

ポイント

大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長、豊内 秀一 特任講師らの研究チームは、PCR法で標的DNAを増幅せずに、光照射だけで超高感度かつ迅速にDNAを分析する「ヘテロプローブ光濃縮法」を新たに開発しました。この手法は、蛍光染色した一本鎖の標的DNA(蛍光DNA)と選択的に結合する一本鎖DNAを修飾した、サイズや材質が異なる2種類のプローブ粒子を用い、選択性と濃縮効率を向上させます。標的DNAを含む溶液に光照射し、標的DNAとプローブ粒子を光の力(光誘起力)とその力が引き起こす対流(光誘起対流)により局所的に濃縮させ、DNAの二重鎖形成を加速することに成功しました。5分間の光照射により大きさ約数十マイクロメートルの集合体が形成され、その間隙(かんげき)に蛍光DNAが捕捉されます。金ナノ粒子への光照射によって生じる光の熱(光発熱効果)で二重鎖の結合を緩め、標的DNAの計測の選択性を高めることができます。本手法の検出下限は7.37フェムトグラム/マイクロリットルであり、マイクロリットル(=10-6リットル)レベルのゴマ粒程度の量の液体試料から1フェムトグラム=10-15グラム(1000兆分の1グラム)のDNAを計測できるため、従来のDNA検出法であるデジタルPCR法(検出下限:約200フェムトグラム/マイクロリットル、通常2.5~5時間を要する)よりも1~2桁高感度となります。また、PCR法による増幅なしで、DNA中の1塩基の違いを高精度に識別することにも成功しました。本研究結果は、がんなどの遺伝子疾患の早期診断や食品・環境中の遺伝子検査の革新につながるものと期待されます。

本研究成果は、2025年1月24日(金)(日本時間)に、米国化学会が発行する国際学術誌「ACS Sensors」にオンライン掲載され、さらに同誌のSupplementary Cover Artにも採用される予定です。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業(JPMJMI21G1)、同 創発的研究支援事業(JPMJFR201O)、科研費基盤研究(A)(JP21H04964)、科研費研究活動スタート支援(22K20512)、科研費若手研究(20K15196)、特別研究員研究奨励費(21J21304)、大阪府立大学 キープロジェクトの支援の下で実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Single Nucleotide Polymorphism Highlighted via Heterogeneous Light-Induced Dissipative Structure”
DOI:10.1021/acssensors.4c02119

<お問い合わせ先>

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