理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和6年12月14日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

脳内のオキシトシン神経活動を1細胞レベルで可視化

~母乳の増える時期に母マウスの神経活動も増大~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 比較コネクトミクス研究チームの矢口 花紗音 大学院生リサーチ・アソシエイト、田坂 元一 上級研究員、宮道 和成 チームリーダーの研究チームは、母マウスが授乳を行う際のオキシトシン神経の活動を1細胞レベルで可視化することに成功しました。

本研究成果は、個々のオキシトシン神経細胞の活動が授乳期の進展に伴いダイナミックに調整される様子を可視化することで明らかにし、自由行動下、リアルタイム、1細胞レベルの神経内分泌学を切り開くものです。

オキシトシンは、乳腺を収縮させることで母乳を放出する射乳反射に必須な神経ホルモンです。授乳の際、オキシトシン神経細胞の集団は数分に1回、波状に活性化(パルス状活動)することで大量のオキシトシンを血中に分泌しますが、この活性化が1細胞レベルでどのように制御されているかは不明でした。

今回、研究チームは、内視顕微鏡を用いた1細胞イメージングを新たに確立しました。その結果、授乳中には多くのオキシトシン神経細胞が一斉にパルス状活動に参加することが分かりました。また、出産後11~12日目の授乳中期では活動する細胞の数が増加し、それぞれの細胞でパルスの波幅(パルス状活動の時間)も伸びて全体の神経活動が増強したことから、仔(こ)マウスが必要とする母乳の増える時期にオキシトシン分泌を促進する仕組みの存在が示唆されました。一方、興味深いことに、授乳を終えた状態(卒乳)の母マウスは母乳を作れないにもかかわらず、パルス状活動は低いながらも維持されていました。

本研究は、科学雑誌「Science Advances」オンライン版(現地時間2024年12月13日付)に掲載されます。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、理化学研究所 大学院生リサーチ・アソシエイト制度「射乳反射を司るオキシトシンパルス形成の神経回路基盤の解明(矢口 花紗音)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 若手研究「養育行動を引き起こすマルチモダル感覚の統合機構とその可塑性(研究代表者:田坂 元一)」、同 基盤研究(B)「妊娠期における神経回路の再編による母体機能の制御(研究代表者:宮道 和成)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「養育行動を引き起こす多感覚統合機構の解明(JPMJPR21S7、研究代表者:田坂 元一)」による助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Flexible Adjustment of Oxytocin Neuron Activity in Mouse Dams Revealed by Microendoscopy”
DOI:10.1126/sciadv.adt1555

<お問い合わせ先>

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