理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 比較コネクトミクス研究チームの播磨 有希子 基礎科学特別研究員(研究当時)、宮道 和成 チームリーダーらの共同研究グループは、マウスを用いて、副腎と腸管の機能をそれぞれ制御する交感神経の異なるサブタイプが脊髄の中に存在することを発見しました。
本研究成果は、交感神経による全身の臓器機能の制御に関して、臓器やその機能ごとに専用のサブタイプが用意されているという新しい概念を提案し、将来的に臓器機能の不調を原因とする疾患の治療戦略に貢献すると期待できます。
ヒトを含む動物のさまざまな臓器は、交感神経と副交感神経から拮抗的な制御を受けています。これらの自律神経は、全身の臓器を一斉に一方向に制御するものと捉えられており、個々の臓器に特化した精細な制御があるとはこれまで一般に認識されてきませんでした。
共同研究グループは、マウスをモデルとして、消化管のぜん動運動をつかさどる腹腔神経節やアドレナリンの分泌を担う副腎髄質を制御する交感神経がどのような細胞種で構成されているのかを、組織学的な観察、網羅的な遺伝子発現パターン解析、ウイルスベクターを用いた遺伝学的な操作法を用いて調べました。その結果、これらの交感神経は共に脊髄の下部胸髄に存在するものの、遺伝子発現パターンによって明瞭に区別することのできるサブタイプに分けられ、そのうちの一群は消化管のぜん動運動を低下させる機能を、別の一群は副腎髄質を介して血糖値を上昇させる機能を、それぞれ持っていることが分かりました。
本研究は、科学雑誌「Nature Communications」オンライン版(日本時間12月10日)に掲載されます。
本研究は、理化学研究所運営費交付金(生命機能科学研究、基礎科学特別研究員制度)で実施し、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業若手研究「消化器機能を制御する交感神経系の特定と光遺伝学による制御(研究代表者:播磨 有希子)」、同 特別研究員奨励費「臓器機能を制御する交感神経系の分子遺伝学的解析(研究代表者:播磨 有希子)」、同 挑戦的研究(開拓)「ニューロンの個性と接続パターンとを結び付ける新規技術で解明する脳の性差と進化(研究代表者:宮道 和成)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「腸-脳機能コネクトミクスによる腸内感覚の機能解明と操作(共同研究者:宮道 和成、JPMJCR2021)」などによる助成を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(858KB)
<論文タイトル>
- “Parallel Labeled-Line Organization of Sympathetic Outflow for Selective Organ Regulation in Mice”
- DOI:10.1038/s41467-024-54928-1
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