東京科学大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年11月28日

東京科学大学
科学技術振興機構(JST)

COを機能性炭素材料に変換する技術を大きく前進

~プラズマが拓く低温触媒科学とカーボンリサイクル技術~

ポイント

東京科学大学(Science Tokyo) 工学院機械系の野崎 智洋 教授、シャオゾン・チェン(Xiaozhong Chen) 博士研究員は、非平衡プラズマでCOを活性化し鉄触媒に作用させることで、高い電気伝導性を示すカーボンブラックの連続かつ大量合成に成功しました。非平衡プラズマを用いれば、電子温度だけ数万度に加熱できることを利用して、反応場の温度を低く保ったまま化学反応を引き起こすことができます。

COを化学的に分解し固体炭素材料(以下、カーボンブラックと称する)としてリサイクルする技術は、有望な低炭素技術の1つとして注目されています。反応の第一段階としてCOをCOに転換する反応は、吸熱反応であるため比較的温度の高い熱エネルギーの供給が必要になります。一方、COを炭素に変換する反応(Boudouard反応)は発熱反応であり、平衡論的に反応温度が低くなるほどカーボンブラックの収率が増加することが期待されます。しかし、温度が低くなると反応速度が遅くなることに加え、低温ではグラファイト構造が形成されにくく望ましい物性を持つカーボンブラックが得られないなど課題が残ります。そのため、低い温度でも化学反応速度を高く保ち、さらにグラファイト化度が高いカーボンブラックを合成する非熱的な触媒反応の実現が望まれていました。このような現状に(かんが)み、研究グループは安価な鉄触媒を流動媒体とするプラズマ流動層反応装置を用い、約600度の低温でCOから電気伝導性が高いカーボンブラックを大量連続合成することに成功しました。

日本におけるカーボンブラックの需要は70~100万トン/年で、主にタイヤや高分子材料への添加剤として利用されています。一方、本手法で合成した炭素材料は電気伝導性が高いことが特徴で、燃料電池や二次電池など低炭素技術で有望される電気化学デバイスの電極材料として利用することができます。COを炭素資源として循環利用するだけでなく、カーボンブラックの新しい需要を開拓するうえでも重要な役割を果たすことが期待されます。

本研究成果は、2024年11月26日発行の「ACS Energy Letters」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「非平衡プラズマを基盤とした電子駆動触媒反応の創成」(研究代表者:野崎 智洋)(課題番号:JPMJCR19R3)の支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Plasma-Catalyzed Sustainable Nanostructured Carbon Synthesis: Advancing Chemical-Looping CO2 Fixation”
DOI:10.1021/acsenergylett.4c02660

<お問い合わせ先>

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