ポイント
- 着床不全が起こる仕組みの1つを、マウスの着床モデルを用いて明らかにしました。
- サイトカインLeukemia inhibitory factor(LIF)は子宮内膜の上皮と間質から分泌され、上皮と間質のLIFが協働して胚接着と胚生育を調節し、着床が成立することを示しました。
- 今後、不妊症の新しい診断法や治療法の開発につながることが期待されます。
東京大学 医学部附属病院の藍川 志津 特任研究員、平岡 毅大 助教(研究当時、現:大阪大学 特任助教)、東京大学 大学院医学系研究科の大須賀 穣 教授、廣田 泰 教授らは、着床期子宮内膜から分泌されるサイトカインであるLeukemia inhibitory factor(LIF)は子宮内膜の上皮と間質で産生され、上皮と間質のそれぞれのLIFが子宮内膜自身に作用し、上皮のLIFが胚接着しやすい環境を整え、間質のLIFがその後の胚生育に働き、着床成立に寄与していることを、マウスモデルの研究で明らかにしました。
不妊症は世界の成人人口の約6人に1人が直面する問題です。少子化が急速に進行している日本では、新生児の10人に1人が体外受精・胚移植を含む生殖補助医療で出生する時代となっています。生殖補助医療の進歩にもかかわらず、良好胚を繰り返し胚移植しても妊娠しない着床不全は不妊治療の最大の課題となっています。本研究成果は、着床不全が起こる仕組みの1つを明らかにしたもので、不妊症の新規診断・治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は2024年11月25日(日本時間)に「Cell Death Discovery」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 「創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR210H)」、日本医療研究開発機構(AMED) 「成育疾患克服等総合研究事業(課題番号:JP24gn0110069、JP24gn0110085)」、同 「女性の健康の包括的支援実用化研究事業(課題番号:JP23gk0210028、JP24gk0210039)」、同 「「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業(課題番号:JP24lk0310083)」、科研費 「基盤研究B(課題番号:JP23K27176、JP23K24481、JP23K23803)」、同 「基盤研究C(課題番号:JP23K08278)」、同 「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:JP24K22157、JP24K21911)」、同 「若手研究(課題番号:JP23K15827)」、同 「研究活動スタート支援(課題番号:JP24K23524)」、こども家庭科学研究費補助金(課題番号:JPMH23DB0101)、持田記念医学薬学振興財団、上原記念生命科学財団、井上科学振興財団、アステラス病態代謝研究会、東大病院・ニプロ株式会社共同研究契約の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(801KB)
<論文タイトル>
- “Spatiotemporal functions of leukemia inhibitory factor in embryo attachment and implantation chamber formation”
- DOI:10.1038/s41420-024-02228-4
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