ポイント
- 細胞間コミュニケーションの重要な媒体であり、狙った場所に薬を運ぶドラッグキャリアなどとしても期待される小型の細胞外小胞(small EVs、sEV)の放出を制御する因子を、CRISPR gRNAで「バーコード化」したsEVを利用して網羅的に解析する手法を開発しました。
- これまでは、細胞を別々のウェルに播種(はしゅ)し、その中でそれぞれの因子がsEVの放出に影響を与えるかを個別に評価するのが典型的な手法でしたが、本研究で開発した手法により、1つのフラスコ内で数千もの遺伝子がsEVの放出に与える影響を一斉に解析可能になりました。また、これまで不明な点が多かったsEVの亜集団ごとの放出制御の違いも明らかになりました。
- 本研究で得られた大量のデータをもとに、sEVの基礎生物学の大きな進展が見込める他、sEVが重要な役割を果たす疾患の治療法の開発や、疾患治療用のsEVの効率的生産法の開発などにつながることが期待されます。
東京大学 大学院医学系研究科の小嶋 良輔 准教授、國武 厚貴 特任研究員(研究当時:東京大学 大学院薬学系研究科 大学院生)、東京大学 大学院薬学系研究科の水野 忠快 助教、浦野 泰照 教授(東京大学 大学院医学系研究科 兼担)らによる研究グループは、小型の細胞外小胞(small Extracellular Vesicles、sEV)の放出を制御する因子を網羅的に解析する新手法、CIBER screening法を開発しました。本研究では、細胞内で遺伝子のノックアウト(KO)に用いるCRIPSR/Cas9システムのガイドRNA(gRNA)を、sEV内に核酸バーコードとして封入する手法を開発し、このバーコード配列を次世代シークエンサーによって一斉解析することで、sEVの放出制御因子の網羅的な探索を実現しました。本手法を用いて、sEVの放出制御因子を多数発見するとともに、これまで不明な点が多かった、異なるsEVの亜集団に特異的な放出制御因子を見いだすことにも成功しました。
本研究成果は、2024年11月19日(英国時間)に「Nature Communications」に掲載されます。
本研究は、JST 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR214N)、同 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR17H5)、同 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR19H1、JPMJCR23B7)、Human Frontier Science Program(課題番号:CDA-00008/2019-C)、科研費 学術変革B(課題番号:24H00868)、新世代研究所 ATI研究助成の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(732KB)
<論文タイトル>
- “Barcoding of small extracellular vesicles with CRISPR-gRNA enables comprehensive, subpopulation-specific analysis of their biogenesis/release regulators”
- DOI:10.1038/s41467-024-53736-x
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