ポイント
- マングローブなどのさまざまな環境に生息するシアノバクテリアの大規模なゲノムデータから、光合成とは異なる光利用システム「微生物型ロドプシン」の新たなグループを発見し、「シアノロドプシン-II(CyR-II)」と命名した。
- CyR-IIは、緑色光型と黄色光型の2つのタイプに分かれ、緑色光型はマングローブ・海洋微生物マット、黄色光型は堆積物・土壌と、異なる生息環境に由来する。このことから、利用波長の異なるCyR-IIの獲得によって、シアノバクテリアはそれぞれの光環境に適応してきたと考えられる。
- 詳細なゲノム解析から、シアノバクテリアはCyR-II以外にもさまざまなロドプシンを遺伝子水平伝播により獲得し、進化してきたことが分かった。本研究は、進化の過程で獲得したロドプシンが、シアノバクテリアに新しい光利用戦略をもたらしてきたことを示した。
海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門の長谷川 万純 ポストドクトラル研究員および生命理工学センターの西村 陽介 研究員と中島 悠 特任研究員、東京大学 大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所の吉澤 晋 准教授、理化学研究所の白水 美香子 チームリーダーと保坂 俊彰 技師ら、岡山大学の須藤 雄気 教授と小島 慧一 講師らによる研究グループは、多様な環境から得られた大規模なメタゲノムデータを網羅的に探索することで、最古の光合成生物として知られるシアノバクテリアから、光合成とは異なる光利用システムである「微生物型ロドプシン」の新たなグループを発見し、「シアノロドプシン-II(CyR-II)」と命名しました。
これまでの研究から、シアノバクテリアはさまざまな光環境へ適応するために、光合成機構を多様化させてきたことが明らかとなっています。今回の発見は、シアノバクテリアの進化とその環境適応の軌跡には「ロドプシン」という新たなキープレーヤーが存在し、シアノバクテリアが「ロドプシン」の獲得を通じてさまざまな光環境に適応してきたことを提唱するものです。本成果は、微生物生態学の国際誌「The ISME Journal」に2024年11月1日付(日本時間)で掲載されます。
本研究の一部は科学研究費助成事業(JP19J21582、22KJ3197、JP17K07324、JP20H05450、JP21H02446、JP15K14601、JP22H00557)、創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)の支援(JP23ama121001(支援番号1455、1463)およびJP23ama121013)、文部科学省「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」(JPMXD1521474594)、科学技術振興機構(JST)さきがけ(JPMJPR23G9)およびACT-X(JPMJAX21BK)の支援によって実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.03MB)
<論文タイトル>
- “Cyanorhodopsin-II represents a Yellow-Absorbing Proton-Pumping Rhodopsin clade within Cyanobacteria.”
- DOI:10.1093/ismejo/wrae175
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
長谷川 万純(ハセガワ マスミ)
海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 ポストドクトラル研究員
Tel:046-867-9661
E-mail:mhasegawajamstec.go.jp吉澤 晋(ヨシザワ ススム)
東京大学 大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所 海洋生態系科学部門 准教授
Tel:04-7136-6419
E-mail:yoshizawaaori.u-tokyo.ac.jp保坂 俊彰(ホサカ トシアキ)
理化学研究所 生命機能科学研究センター 技師
白水 美香子(シロウズ ミカコ)
理化学研究所 生命機能科学研究センター チームリーダー
須藤 雄気(スドウ ユウキ)
岡山大学 学術研究院医歯薬学域(薬学系) 教授
Tel:086-251-7945
E-mail:sudookayama-u.ac.jp -
<JST事業に関すること>
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〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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E-mail:prestojst.go.jp原田 千夏子(ハラダ チカコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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