ポイント
- 高分子材料のさらなる安全性・強靭(きょうじん)性の向上が望まれています。
- 数十から数百ナノメートル程度の目に見えない高分子微粒子を集積させると強靱な高分子フィルムが得られ、特別な化学反応を必要とせずに、溶媒に浸すだけで元の微粒子まで分解することができます。しかも、劣化せず繰り返し使用(リサイクル)することが可能です。
- 本研究では、非常に明るい光で物質の構造をナノレベル(100万分の1ミリ単位)で解析できる放射光散乱を駆使することで、容易に分解できるにもかかわらず、なぜ強靭な高分子フィルムが形成するのかを明らかにしました。
- 劣化なくリサイクルができ、微粒子から成る強靭な高分子材料の設計指針を確立したことで、身の回りに数多く存在する多様な高分子への適用が期待できます。
弘前大学 大学院理工学研究科の呉羽 拓真 助教らの研究グループは、強靭でありながらリサイクル可能な高分子微粒子材料の構造を評価し、強靭化メカニズムを解明しました。この強靭な微粒子材料は機能性材料として何度も再利用できるため、幅広い用途で使用されている高分子材料への適用が期待される一方、どのように強靭性が形成されるのかは分かっていませんでした。本研究では、放射光X線を微粒子フィルムに照射し、散乱したX線を読み取ることで、微粒子接触面が厚さ数ナノメートル(100万分の1ミリ)単位で絡まり合い、強くて壊れにくいフィルムのナノ構造に重要な役割を果たしていることを解明しました。
本発見は、リサイクル可能、かつ強靭な高分子材料を作製するために必要な情報を提供し、環境や人体への負荷が少ない機能性材料の開発に貢献します。
本成果は、2024年10月18日(日本時間)に米国化学会「Langmuir」誌に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(JPMJCR21L2 研究代表者:鈴木 大介)の支援のもと行われました。本研究の放射光実験は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 放射光共同利用実験課題(課題番号:2022G535)とSPring-8フロンティアソフトマター開発産学連合ビームライン(課題番号:2022B7251、2023A7201)により実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(531KB)
<論文タイトル>
- “Nanoscale Structures of Tough Microparticle-based Films investigated by Synchrotron X-ray Scattering and All Atom Molecular Dynamics Simulation”
- DOI:10.1021/acs.langmuir.4c02361
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
呉羽 拓真(クレハ タクマ)
弘前大学 大学院理工学研究科 助教
〒036-8561 青森県弘前市文京町3番地
E-mail:t-kurehahirosaki-u.ac.jp
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<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
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<報道担当>
弘前大学 大学院理工学研究科 総務グループ 総務担当
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E-mail:r_kohohirosaki-u.ac.jp
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