ポイント
- コンピューター上のデータを安全にメモリーに格納し、効率的に利活用するための新たなメモリー暗号化機構を開発しました。
- 開発したメモリー暗号化機構の安全性を数学的に証明しました。
- 近年活用されるテラバイトスケールの大容量メモリーに対しても、利便性を損なうことなく、高速に暗号化を実現できることを明らかにしました。
- 今後、開発されるコンピューターやメモリーシステムの安全性の向上に大きく貢献すると期待されます。
普段の生活や社会・経済活動に必要不可欠なパーソナルコンピューター(PC)やスマートフォンでは、個人情報や機密情報などの情報を処理・格納するメモリーデータの機密性、および改ざん検知を実現するメモリーセキュリティ(メモリー暗号化)が必要とされています。しかし、近年の大容量化するメモリーにおいてデータの安全性、性能、そして利便性を損なわずに暗号化を実現することは特に難しく、安全なコンピューターの実現における大きな障壁となっていました。
東北大学 電気通信研究所の本間 尚文 教授らのグループは、日本電気株式会社(以下、NEC)と共同で、安全性を担保したまま、性能と利便性(レジリエンス性)を飛躍的に向上させたメモリー暗号化機構の新方式を開発しました。本機構は、メモリー暗号化に伴うコンピューターの負荷を大きく削減するとともに、テラバイト級の大容量メモリーにも効率的に適用が可能です。またこれまでの方式と比べ、開発した方式は暗号化による遅延を最大約63パーセント、メモリーの性能低下を約44パーセント抑制でき、偶発的なメモリーエラーやメモリー改ざんなどのメモリーデータへの攻撃検知から復旧までの時間を数千倍高速にできることを明らかにしました。今後、開発した方式により、多様なコンピューターにおいてデータ保護と安全なデータ利活用に貢献することが期待されます。
本成果は2024年10月14日から18日に米国計算機学会(ACM)が開催するコンピューターセキュリティーに関する国際会議「ACM SIGSAC Conference on Computer Communications Security(CCS)」において発表されます。
本研究成果は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「Society5.0を支える革新的コンピューティング技術」研究領域(研究総括:坂井 修一)「耐量子計算機性秘匿計算に基づくセキュア情報処理基盤」(研究代表者:本間 尚文、グラント番号:JPMJCR19K5)の事業・研究課題の助成により得られました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(658KB)
<論文タイトル>
- “Crystalor:Recoverable Memory Encryption Mechanism with Optimized Metadata Structure”
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
本間 尚文(ホンダ ナオフミ)
東北大学 電気通信研究所 教授
上野 嶺(ウエノ レイ)
東北大学 電気通信研究所 客員准教授
Tel:022-217-5506
E-mail:contact.ecsislabgrp.tohoku.ac.jp -
<JST事業に関すること>
前田 さち子(マエダ サチコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ICTグループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp -
<報道担当>
東北大学 電気通信研究所 総務係
Tel:022-217-5420
E-mail:riec-somugrp.tohoku.ac.jpNEC コーポレートコミュニケーション部 根本
E-mail:pressnews.jp.nec.com
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp