ポイント
- 難治性不妊症である着床不全が起こる仕組みの1つを明らかにしました。
- マウスを用いた着床モデルにおいて、シクロオキシナーゼ(COX-1・COX-2)が異なるタイミングでプロスタグランジン産生を起こし、子宮内膜の機能を制御していることを示しました。
- 今後、着床不全、不育症、前置胎盤などの疾患の病因・病態の解明につながることが期待されます。
東京大学 医学部附属病院の藍川 志津 特任研究員、松尾 光徳 助教、東京大学 大学院医学系研究科の大須賀 穣 教授、廣田 泰 教授らは、着床期子宮内膜の胚との接触面においてプロスタグランジン(PG)産生の主要酵素であるシクロオキシナーゼ(COX-1・COX-2)が異なるタイミングで働いていること、COX-1は子宮内膜への胚の接着、COX-2は子宮内膜の脱落膜化や子宮内膜への胚の進入に必要であることを、マウスモデルの研究で明らかにしました。着床期子宮内膜でのCOXの役割の違いを示したのは世界初です。
不妊症は世界の成人人口の約6人に1人が直面する問題です。生殖補助医療(体外受精・胚移植)の進歩にもかかわらず、良好胚を繰り返し胚移植しても妊娠しない着床不全は不妊治療の最大の課題となっています。本研究成果は、着床不全が起こる仕組みの1つを明らかにしたもので、難治性不妊症である着床不全の新規診断・治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は2024年10月9日(日本時間)に米国科学雑誌「JCI insight」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR210H)、日本医療研究開発機構(AMED) 成育疾患克服等総合研究事業(課題番号:JP24gn0110069、JP24gn0110085)、AMED 女性の健康の包括的支援実用化研究事業(課題番号:JP23gk0210028、JP24gk0210039)、AMED 「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業(課題番号:JP24lk0310083)、科研費 基盤研究A(課題番号:JP20H00495)、科研費 基盤研究B(課題番号:JP23K27176、JP23K24481、JP23K23803)、科研費 基盤研究C(課題番号:JP23K08278)、科研費 挑戦的研究(萌芽)(課題番号:JP24K22157、JP24K21911)、科研費 若手研究(課題番号:JP23K15827)、科研費 研究活動スタート支援(課題番号:JP24K23524)、こども家庭科学研究費補助金(課題番号:JPMH23DB0101)、持田記念医学薬学振興財団、上原記念生命科学財団、井上科学振興財団、アステラス病態代謝研究会、東大病院・ニプロ株式会社共同研究契約の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(888KB)
<論文タイトル>
- “Spatiotemporally distinct roles of cyclooxygenase-1 and cyclooxygenase-2 at fetomaternal interface in mice”
- DOI:10.1172/jci.insight.181865
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