ポイント
- 歩行における左右の足の交互運動は厳密には制御されていないことを発見
- 複雑な身体運動のために、これまで肢間協調(左右の足を協調的に動かすこと)の制御の実態をつかむことができなかったが、位相縮約理論とベイズ推定の手法により可能に
- 肢間協調を積極的に制御しないことは、エネルギーを効率化できるほか、ある程度のゆらぎを許容することでさまざまな状況に対応できる能力の向上にもつながるため、このような制御戦略をとっていると予想される
- 加齢や脳疾患による歩行障害の原因究明や、新たなリハビリ手法・歩行支援装置への応用に期待
われわれは、左右の足を交互に前に出して歩きます。この左右交互の関係性が崩れてしまうと歩行機能の低下を招くため、左右の足はきっちりと交互に前に出すように比較的厳密に制御されていると予想されていましたが、歩行における複雑な身体運動のために、その実態は未解明でした。
大阪大学 大学院基礎工学研究科の青井 伸也 教授、海洋研究開発機構の荒井 貴光 研究員、京都大学 大学院情報学研究科の青柳 富誌生 教授らの研究グループは、左右の足を協調的に動かす肢間協調の制御様式を位相縮約理論に基づく位相振動子を用いてモデル化し、健常者の歩行中の計測データを用いたベイズ推定により推定しました。その結果、これまでの予想に反して、左右の足の交互運動は、左右交互の関係から少しくらい外れても、元に戻そうとするような制御は働いておらず、この関係性は必ずしも厳密には制御されていないことを世界で初めて明らかにしました。
歩行中の左右の足の協調性は加齢や脳疾患によって減退してしまい、歩行機能の低下を招いてしまいます。本研究成果により明らかにした肢間協調の制御様式が加齢や脳疾患によってどのように変化するかを今後調べることで、歩行機能が低下する原因の究明や、新たなリハビリ手法・歩行支援装置の開発などにつながると期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Communications Biology」に、9月20日(金)(日本時間)に掲載されます。
本研究の一部は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR2021)、同 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR09U2)、JSPS科研費(JP24H00723、JP20K20520、JP20K21810、JP20H04144)、MEXT科研費(JP23H04467)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(791KB)
<論文タイトル>
- “Interlimb coordination is not strictly controlled during walking”
- DOI:10.1038/s42003-024-06843-w
<お問い合わせ先>
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大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授
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E-mail:araitakjamstec.go.jp青柳 富誌生(アオヤギ トシオ)
京都大学 大学院情報学研究科 教授
Tel:075-753-3387
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