ポイント
- 細胞内のさまざまな小器官(オルガネラ)の状態を全体像(ランドスケープ)として一目で直感的に観察・分析できる新しい方法「オルガネラランドスケープ解析法」を開発しました。
- この方法により、これまで捉えにくかった異なるオルガネラ間の接触や、物質取り込み過程でのオルガネラの変化を理解できるようになりました。
- 未知のオルガネラの発見や、外部環境、感染、薬剤、疾患などが細胞小器官に与える影響の評価など、幅広い目的に使用されることが期待されます。
東京大学 大学院医学系研究科の水島 昇 教授、本田 郁子 准教授、栗川 義峻 特任助教らによる研究グループは、多種類の細胞小器官(オルガネラ)の状態を全体像(ランドスケープ)として一目で理解できる新しい方法「オルガネラランドスケープ解析法」を開発しました。
従来の方法では、細胞内で密集し常に変化しているオルガネラを同時に多種類区別して解析し、その複雑な全体像(ランドスケープ)を定量に理解することは困難でした。本研究では、オルガネラを個別の粒子として分離し、多数の指標で同時に分析した多次元情報を2次元平面に次元圧縮することで、多数のオルガネラのランドスケープを一度に解析できるようになりました。この新しい方法によって、オルガネラの相互関係や分布が直感的に理解できるようになります。例えば、小胞体とミトコンドリアの接触部位の検出や、細胞が物質を取り込む過程(エンドサイトーシス)における関連オルガネラの経時的変化の包括的な可視化が可能となりました。
この方法で細胞内のオルガネラの全体像を可視化することにより、未知のオルガネラの発見や、さまざまな生理的・病理的条件下でのオルガネラの相互作用や分布などの変化の評価などへの応用が期待されます。
本研究は、2024年9月18日(水)(日本時間)に米国科学誌「PLOS Biology」(オンライン)に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト(課題番号:JPMJER1702)」(研究総括:水島 昇)、科学研究費助成事業 特別推進研究「膜構造の分解を基軸とした細胞内分解の研究(課題番号:22H04919)」(代表:水島 昇)、科学研究費助成事業 基盤研究(C)「オルガネラ粒子マルチパラメーター計測で展開する細胞内オルガネラ遷移」(代表:本田 郁子)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(823KB)
<論文タイトル>
- “Organelle landscape analysis using a multi-parametric particle-based method”
- DOI:10.1371/journal.pbio.3002777
<お問い合わせ先>
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東京大学 大学院医学系研究科 教授
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東京大学 大学院医学系研究科 准教授
Tel:03-5841-2862
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