東京都立大学,理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和6年9月13日

東京都立大学
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

細胞内の生体分子間のコミュニケーションの仕組みの解明

~GRB2とSOS1の役割を分子レベルで明らかに~

ポイント

私たちの体が正常に働くためには、細胞同士がうまくコミュニケーションを取る必要があります。さらに、細胞内の活動はDNAがつかさどるため、外部からの信号を正確に受け取り、それをDNAに伝えることが不可欠です。今回の研究では、この重要なプロセスを支えるヒトのたんぱく質「GRB2」と「SOS1」の役割に焦点を当てました。GRB2とSOS1は、他の細胞からの情報を受けて、特定の細胞が成長したり、自分を守ったりするための「メッセージ」を効果的に伝えるために欠かせない存在です。一方で、これまではGRB2やSOS1がどのようにして外部からのメッセージ信号を効率的に伝えているのかは分かっていませんでした。

東京都立大学 大学院理学研究科の館野 圭太(当時大学院生)、菅澤 はるか(研究員)、池谷 鉄兵 准教授、伊藤 隆 教授、理化学研究所 生命機能科学研究センターの美川 務 専任研究員らは、この研究によって、GRB2がSOS1とどのように結び付き、体内のさまざまなプロセスを調整しているのかを分子のレベルで解明することに成功しました。

本研究グループは、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)という手法を用いて、GRB2とSOS1を原子レベルで観察しました。また、NMRデータからたんぱく質間の結合の強さを導き出す新たな計算プログラムを開発することに成功しました。これにより、これまで詳細が分からなかったGRB2とSOS1のたんぱく質間相互作用を原子レベルで解明することに成功しました。また近年、液液相分離(LLPS)という現象が、細胞のさまざまな制御に重要な役割を担っていると考えられていますが、今回の研究では、GRB2とSOS1が関わる液液相分離形成機構のモデルも提案しました。

この発見は、細胞の中での分子間の情報伝達機構を理解するための大きな一歩であり、また、病気の治療法を見つけるための新たな手がかりとなることも期待できます。

本研究成果は、2024年9月12日付(現地時間)で科学雑誌「Chemical Science」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「細胞内現象の時空間ダイナミクス」研究領域の研究課題名「インセルNMR計測による細胞内蛋白質の構造・動態・機能解明」(課題番号:JPMJCR21E5、研究代表者:西田 紀貴)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(課題番号:JP15K06979、JP19H05645、JP15H01645、JP16H00847、JP17H05887、JP19H05773、JP26102538、JP25120003、JP16H00779、JP21K06114)」、島津科学技術振興財団、精密測定技術振興財団による研究資金支援と、文部科学省「先端研究基盤共用促進事業 NMRプラットフォーム(課題番号:JPMXS0450100021) 理化学研究所 共同利用NMR装置」の利用により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Different molecular recognition by three domains of the full-length GRB2 to SOS1 proline-rich motifs and EGFR phosphorylated sites”
DOI:10.1039/D4SC02656J

<お問い合わせ先>

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