東海国立大学機構 名古屋大学,東京農工大学,日本大学,九州大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年8月27日

東海国立大学機構 名古屋大学
東京農工大学
日本大学
九州大学
科学技術振興機構(JST)

鉄系超伝導体(Ba,K)FeAsにおける粒界特性の特異性を発見

~多結晶でも高性能な高温超伝導体の創製に道~

ポイント

名古屋大学の畑野 敬史 准教授、東京農工大学の秦 東益 博士後期課程学生、内藤 方夫 シニアプロフェッサー、山本 明保 准教授、日本大学の飯田 和昌 教授、九州大学の郭 子萌 博士研究員(当時)、高 紅叶 博士研究員、斉藤 光 准教授、嶋田 雄介 准教授、波多 聰 教授との共同研究で、鉄系高温超伝導体のうち、最も実用化が期待されている物質である(Ba,K)FeAsで、粒界においても高い超伝導性能を持つことを明らかにしました。

高い超伝導転移温度を示す銅酸化物高温超伝導体および鉄系高温超伝導体は、粒界において隣接する結晶同士のずれ角度が大きくなると、程度の差はあるものの粒界をまたいで流れる超伝導電流が強く抑制されてしまう「粒界弱結合」という問題があるため、多結晶形態での産業応用は難しいとされています。今回、(Ba,K)FeAsの単一人工粒界を世界に先駆けて作製し、粒界弱結合の影響を調べたところ、結晶のずれ角度が24度まで到達しても、超伝導電流の減衰が他の高温超伝導体と比べて緩やかであることが分かりました。本成果は、多結晶でも高い性能を発揮できる高温超伝導体材料の創製へと展開しうるものであり、医療用MRIや交通インフラなどで重要な役割を果たす高性能超伝導磁石の高性能化・低コスト化につながる成果です。

本研究成果は、2024年8月23日にネイチャー・パブリッシング・グループの学術誌「NPG Asia Materials」に掲載されました。

本研究は、2018年度から始まった科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST 「超伝導インフォマティクスに基づく多結晶型超伝導材料・磁石の開発」(研究代表者:山本 明保、JPMJCR18J4)の一環で実施されました。また、日本学術振興会 科学研究費補助金の助成、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)の支援も受けて行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“High tolerance of the superconducting current to large grain boundary angles in potassium-doped BaFeAs
DOI:10.1038/s41427-024-00561-9

<お問い合わせ先>

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