ポイント
- 渦は小さな細胞や流体の高速操作を支える重要な現象ですが、その発生制御は困難でした。
- 0.1ミリ秒(10,000分の1秒)という短い時間スケールで、渦の発生制御に成功しました。
- 渦を使った流路の機能群を創出することで、マイクロ流体工学の“新たな領域”を拓くことが期待されます。
マイクロ渦の生成は、生物学や化学の分野において高速な細胞操作や効率的な溶液混合を可能とするため、マイクロスケールの重要な現象となっています。しかし、マイクロ渦が発生する時間は、1ミリ秒よりも短い時間であることから、制御することは困難とされてきました。
本研究では、極めて短い時間で流れを制御することで、マイクロ渦の発生制御技術を確立しました。
九州大学 大学院工学府の齋藤 真 博士課程大学院生、東京大学 大学院工学系研究科の新井 史人 教授、九州大学 大学院工学研究院の山西 陽子 教授、九州大学 大学院工学研究院の佐久間 臣耶 准教授の研究グループは、マイクロ流体チップ中に組み込んだオンチップメンブレンポンプを用いて、50から450程度のレイノルズ数に相当する高速流を0.1ミリ秒程度の時間で制御することで、渦の発生制御が可能なマイクロ流体システムを構築しました。さらに、渦が配管抵抗の原因となることに着目し、0.1ミリ秒の流れ場を設計・制御することで、流路の順方向・逆方向の流れやすさを調節することができる流体素子を実現しました。これにより、バルブを使用しない新しい流体制御技術の構築に成功し、その応用として遊泳細胞の単一細胞ピペッティングを示しました。本成果は、渦の発生制御に基づく、新たな流路機能群の創出に貢献し、マイクロ流体工学の領域・応用を拓くことが期待されます。
本研究は、2024年8月6日(日本時間)に米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」にオンライン版で公開されました。
本研究は、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2157)、JSPS 特別研究員奨励費(22J23814)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.7MB)
<論文タイトル>
- “Spatiotemporally controlled microvortices provide advanced microfluidic components”
- DOI:10.1073/pnas.2306182121
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
佐久間 臣耶(サクマ シンヤ)
九州大学 大学院工学研究院 准教授
Tel:092-802-3166
E-mail:sakumamech.kyushu-u.ac.jp -
<JST事業に関すること>
加藤 豪(カトウ ゴウ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-7276 Fax:03-6268-9413
E-mail:souhatsu-inquiryjst.go.jp -
<報道担当>
九州大学 広報課
Tel:092-802-2130 Fax:092-802-2139
E-mail:kohojimu.kyushu-u.ac.jp東京大学 大学院工学系研究科 広報室
Tel:03-5841-0235
E-mail:kouhoupr.t.u-tokyo.ac.jp科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp