東海国立大学機構 名古屋大学,京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年8月2日

東海国立大学機構 名古屋大学
京都大学
科学技術振興機構(JST)

電荷分離積層構造を形成する安定なカチオン性分子を開発

~積層様式の制御を通じた電荷キャリア輸送の新戦略を提案~

ポイント

名古屋大学 大学院理学研究科の村井 征史 准教授と同 トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM) 学際統合物質科学研究機構(IRCCS)の山口 茂弘 教授、京都大学 大学院工学研究科の関 修平 教授らの研究グループは、電荷種分離型の積層構造の形成を伴い、高い電荷キャリア輸送特性を発現するカチオン性π共役分子の開発に成功しました。

π共役化合物は秩序構造の形成により、特異な光学特性や電荷輸送特性を発現するため、エレクトロニクス材料をはじめ、さまざまな分野で応用されています。本研究では、非ベンゼノイド芳香族であるアズレンの導入と、硫黄架橋による平面固定化を組み合わせることで、正電荷を帯びたπ電子系を大きく安定化できること、そして対アニオンの選択により、それらを電荷種分離型に積層できることを見いだしました。対アニオンに含まれるフッ素原子が、カチオン種の水素および硫黄原子と静電相互作用することが、この特異な積層構造を形成するための鍵でした。また、時間分解マイクロ波分光と電気伝導度の測定により、柱(カラム)状に積層したこのカチオン性分子を介し、高い電荷キャリア輸送特性が発現することを明らかにしました。本研究成果は、イオン性π共役化合物をエレクトロニクス材料として応用する上での、新たな戦略として期待されます。

本研究成果は、2024年8月2日付米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載されます。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A) 「高密度共役の科学」(23H04023)、国際共同研究加速基金 「動的元素効果デザインによる未踏分子機能の探求」(22K21346)、および科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 CREST 「励起ダイナミクス制御に基づく光機能性ヘテロπ電子系の創製」(JPMJCR21O5)の支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Sulfur-Bridged Cationic Diazulenomethenes: Formation of Charge-Segregated Assembly with High Charge-Carrier Mobility”
DOI:10.1021/jacs.4c07122

<お問い合わせ先>

(英文)“Sulfur-Bridged Cationic Diazulenomethenes”

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