ポイント
- 光濃縮技術により、微量で低濃度なサンプルでも約5分で正確なウイルス計測が可能。
- 従来の製造方法では15~18時間かかっていた抗体のコーティング(固相化)を1分に短縮。
- 抗原抗体反応の大幅な加速により、さまざまな感染症、がん、認知症などの早期診断に貢献。
大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長、理学研究科の叶田 雅俊 大学院生(博士後期課程2年)らの研究チームは、抗原抗体反応を検出原理とする検査手法であるイムノアッセイに、光濃縮技術を取り入れた「光誘導イムノアッセイ技術」を新たに開発しました。研究チームは、500ナノメートルという極小のお椀構造(ボウル状構造)を持つ光濃縮基板(ナノボウル基板)を作製。それを用いることで、抗体をわずか1分でコーティング(固相化)し、レーザーポインターと同程度の微弱レーザー照射により超高効率な光濃縮を行い、たんぱく質の迅速・高感度検出を実現しました。適用例として、人工唾液中の擬似ウイルス(新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質で修飾されたナノ粒子)を約5分で選択的に検出できること、また、2回目のレーザー照射無しの場合に比べて10~20倍高感度な計測ができることを実証しました。本研究成果により、煩雑な抗体コーティングのプロセスを短縮し、迅速かつ高感度なたんぱく質検出を可能にしました。これにより、さまざまな感染症、がん、認知症などの早期診断に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2024年6月26日(水)(日本時間)に、Springer Nature社が発行する国際学術誌「npj Biosensing」の創刊号にオンライン掲載される予定です。
本研究は、JST 未来社会創造事業「低侵襲ハイスループット光濃縮システムの開発(JPMJMI21G1)」(研究開発代表者:飯田 琢也)、JST 創発的研究支援事業「バイオミメティック電極による外場誘導型エコシステムの創成(JPMJFR201O)」(研究代表者:床波 志保)、AMED ウイルス等感染症対策技術開発事業「光濃縮による1ステップ超高感度ウイルス感染症検査システムの開発(No.JP20he0622017)」(研究代表者:飯田 琢也)、科研費 基盤研究(A)(21H04964)(研究代表者:飯田 琢也)、科研費 特別研究員奨励費「非周期光濃縮基板のボトムアップ的作製法と超高感度バイオ分析技術の開発(No.JP23KJ1851)」(研究代表者:叶田 雅俊)、大阪府立大学 キープロジェクト(「LAC-SYSプロジェクト―次世代バイオフォトニクスが拓く未来―」)などの支援の下で実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(768KB)
<論文タイトル>
- “High-throughput Light-induced Immunoassay with Milliwatt-level Laser under One-minute Optical Antibody-coating on Nanoparticle-imprinted Substrate”
- DOI:10.1038/s44328-024-00004-z
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
飯田 琢也(イイダ タクヤ)
大阪公立大学 大学院理学研究科 教授/LAC-SYS研究所 所長
Tel:072-254-8132
E-mail:t-iidaomu.ac.jp床波 志保(トコナミ シホ)
大阪公立大学 大学院工学研究科 准教授/LAC-SYS研究所 副所長
E-mail:tokonamiomu.ac.jp -
<JST事業に関すること>
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