ポイント
- 雲は、太陽から地球に入射する「太陽放射」および地球から宇宙へ射出する「地球放射」を大きく変調させる役割を持ちますが、降水粒子が持つ放射効果については未解明でした。
- 本研究では、降水粒子の放射効果によるエネルギー収支変化を介した気候応答を調査し、熱帯降水および極域の温暖化に影響が顕著に現れることをメカニズムレベルで解明しました。
- 本研究の成果は、北極の温暖化の度合いが観測よりも小さいという世界各国の気候モデルに共通する誤差の原因を説明し、より高精度の気候変動予測に貢献することが期待されます。
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(理)の道端 拓朗 准教授は、雨や雪といった降水粒子が地球のエネルギー収支を変調させる効果に着目し、気温・降水量への全球的・地域的な影響についてメカニズムレベルで解明することに成功しました。本研究成果は、2024年6月19日(日本時間)付で、「Nature Partner Journal」の国際学術誌「npj Climate and Atmospheric Science」誌に掲載されます。
雲や大気中の微粒子は、太陽から地球に入射する「太陽放射」および地球から宇宙へ射出する「地球放射」を変調させる役割を持つことがよく知られていますが、降水粒子が持つ放射効果については未解明でした。これは、国内外ほとんどの数値気候モデルが降水を極めて簡素に取り扱ってきたことに起因し、降水粒子は放射に対して「透明」なものとしてモデル化されることが一般的でした。道端准教授が開発した、降水粒子を精緻に取り扱う世界最高水準の降水微物理スキーム「CHIMERRA」を用いることで、降水粒子が北極域の温室効果に顕著に寄与する役割を持つことが明らかになりました。
本研究成果は、過去・現在・将来の気候を予測する国際プロジェクト「CMIP6」のモデルに共通して見られる、北極温暖化の過小評価バイアスを改善に導く可能性を示唆しています。北極気候の再現性は、日本を含む中緯度の異常気象にも密接に関わっているため、降水粒子の放射効果の導入により中・長期の気候変動予測の高精度化に大きく貢献することが期待されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(JPMJFR206Y)、JSPS科研費(JP23K13171、JP19H05669)、環境省・(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費(JPMEERF21S12004)、文部科学省「気候変動予測先端研究プログラム」(JPMXD0722680395)の支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Radiative effects of precipitation on the global energy budget and Arctic amplification”
- DOI:10.1038/s41612-024-00684-4
<お問い合わせ先>
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道端 拓朗(ミチバタ タクロウ)
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(理) 准教授
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