東京大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年6月12日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

自閉症の人はなぜ「友人を覚えづらい」のか

~社会性記憶異常の分子神経メカニズムの解明~

ポイント

東京大学 定量生命科学研究所の奥山 輝大 准教授、同大学 大学院医学系研究科 ジョン・ミョン 大学院生(研究当時)らのグループは、自閉症における「友人を記憶する能力の低下」という症状が、海馬の腹側CA1領域の異常に起因することを発見しました。

私たちは日々の生活の中で、友人一人一人を記憶することができますが、自閉症の方はその能力が一部低下していることが知られています。マウスを用いた本研究では、他者についての記憶を貯蔵している「海馬腹側CA1領域」に注目し、自閉症関連遺伝子のShank3遺伝子の働きをin vivoゲノム編集技術(CRISPR/Cas9法)により機能欠損させたところ、「友人を記憶する能力の低下」という症状を模倣することに成功しました。

自閉症の病態神経メカニズムの理解が進むとともに、いまだ創薬が進んでいない自閉症の新規治療法開発において、海馬腹側CA1領域が創薬標的領域となる可能性が期待されます。

本研究成果は、2024年6月12日(現地時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST)「創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR2143)」「さきがけ(課題番号:JPMJPR1781)」「CREST(課題番号:JPMJCR23B1)」、日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業(課題番号:JP18H02544、JP20K21459、JP21H02593、JP21H05140)」「特別研究員奨励費(課題番号:JP22J11822、JP22J21085、JP20J01468、JP19J00911)」、日本医療研究開発機構(AMED)「脳とこころの研究推進プログラム(課題番号:JP21wm0525018)」、内藤記念科学振興財団、セコム科学技術振興財団の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Conditional knockout of Shank3 in the ventral CA1 by quantitative in vivo genome-editing impairs social memory in mice”
DOI:10.1038/s41467-024-48430-x

<お問い合わせ先>

(英文)“Why do people with autism have difficulty remembering other people?”

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