量子科学技術研究開発機構,科学技術振興機構(JST)

令和6年6月6日

量子科学技術研究開発機構
科学技術振興機構(JST)

パーキンソン病やレビー小体型認知症でのαシヌクレイン沈着を捉えるPET薬剤を開発

~生体脳で可視化することに世界で初めて成功~

ポイント

量子科学技術研究開発機構(以下「QST」) 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究センターの遠藤 浩信 主任研究員と量子生命科学研究所の小野 麻衣子 研究員らは、パーキンソン病およびレビー小体型認知症患者脳におけるαシヌクレイン沈着病変を世界で初めて可視化し、その沈着量が運動症状の重症度と関連することを明らかにしました。

パーキンソン病やレビー小体型認知症は、αシヌクレインというたんぱく質の病的な凝集体が出現し、神経細胞死を引き起こすことが示されています。パーキンソン病は、根本治療薬のない進行性の脳の病気のうちアルツハイマー病に次いで多いにもかかわらず、αシヌクレイン病変を生体脳で可視化する技術は未確立で、患者が亡くなった後で脳の病理検査(組織を取り出して染色等を行う)により病変を調べない限り、確定診断は行えませんでした。

QSTでは、アルツハイマー病の原因となりうるタウたんぱく質の病変を世界に先駆けて画像化するなど、異常たんぱく質の沈着を生体脳で可視化する技術の開発に取り組んできました。そうした開発で得たノウハウを活用し、タウ病変よりもさらに量が少なく画像化が難しいとされるαシヌクレイン病変の生体脳での検出に挑み、2022年に製薬企業との連携でPET用薬剤(18F-SPAL-T-06)を開発しました。このPET用薬剤では、αシヌクレインが多量に沈着する多系統萎縮症という疾患では病変を画像化できましたが、病変量が非常に少ないパーキンソン病やレビー小体型認知症では病変の画像化に至っていませんでした。

そこで本研究では、αシヌクレイン病変に強く結合する別のPET用薬剤として18F-C05-05を開発し、パーキンソン病やレビー小体型認知症のモデルとなるαシヌクレイン病態伝播マウスおよびマーモセットで、病変を画像化できることを明らかにしました。次にこのPET用薬剤を臨床で評価し、パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者で病変を検出できることを実証しました。また、PETで検出されるαシヌクレイン病変の量と、運動症状の進行の間に関連性があることが示されました。

今回新たに開発された18F-C05-05は、脳の病理変化に基づくパーキンソン病やレビー小体型認知症の診断や病気の進行度を客観的な評価に利用できることに加えて、治療薬開発時の効果判定にも有用な可能性があります。また、疾患モデル動物と患者の両方でαシヌクレイン沈着を検出できることから、非臨床と臨床をつなぐ橋渡し研究に利用でき、病態解明や治療薬開発を促進することが期待されます。

本研究は、神経科学分野のトップジャーナルの1つでインパクトの大きい論文が数多く発表されている科学誌「Neuron」のオンライン版に2024年6月6日(木)(日本時間)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 「ムーンショット型研究開発事業『臓器連関の包括的理解に基づく認知症関連疾患の克服に向けて』」、日本医療研究開発機構(AMED)「脳とこころの研究推進プログラム(革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト)『変性性認知症による脳機能ネットワーク異常の全容解明』および『神経変性疾患のタンパク凝集・伝播病態と回路傷害の分子イメージング研究』」、「脳とこころの研究推進プログラム(精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト)『シヌクレイノパチーを全身病として捉えた病態解明と疾患修飾療法の開発』」、「ムーンショット型研究開発事業『病気につながる血管周囲の微小炎症を標的とする量子技術、ニューロモデュレーション医療による未病時治療法の開発』」、「認知症研究開発事業『病原性シードの構造生物学的理解に基づくαシヌクレイン伝播分子機構解明』」、「認知症研究開発事業『認知症の発症に関わるアストロサイト機能不全分子の同定とメカニズムの解明』」、MEXT/JSPS科研費 JP22K07529、新潟大学 脳研究所 共同研究費補助金(2021-201907)の支援により開発した基盤技術を活用した成果です。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Imaging α-synuclein pathologies in animal models and patients with Parkinson’s and related diseases”
DOI:10.1016/j.neuron.2024.05.006

<お問い合わせ先>

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