筑波大学,岡山大学,広島工業大学,レンヌ大学,東京工業大学,東海国立大学機構 名古屋大学,東北大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年6月3日

筑波大学
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東海国立大学機構 名古屋大学
東北大学
科学技術振興機構(JST)

入れ子状にした物質への光照射で生じる新しいエネルギー現象を観測

ポイント

近年、厚さが1原子分しかない層状や筒状の材料(低次元材料)を重ねると、新しい性質が発現することが報告されています。こうした構造体の静的な性質、例えば電気伝導特性などは数多く調べられていました。しかし、光を照射することで生じる層間の電子移動や、その後に続く原子の運動など動的な性質については、ほとんど調べられていませんでした。

本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)を窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)で包み、入れ子にした筒状の構造体を合成し、そこに光を照射した時に生じる電子と原子の運動を観測しました。電子の運動については、光の照射によって生じる瞬間的な分子構造や電子構造の変化を10兆分の1秒の精度で捉えられる広帯域の超高速過渡透過率測定で観測しました。また原子の運動については、1兆分の1秒の精度で観測可能な超高速時間分解電子線回折法を用いて観測しました。

その結果、異種の低次元材料を重ね合わせると、電子の抜け道(チャネル)が発現することを発見しました。さらに、CNTに光を当てることで生じた電子が、このチャネルを通してBNNT中に移動することが分かりました。この励起された電子のエネルギーは、BNNTの中で熱エネルギーへと速やかに変わるため、熱エネルギーを極めて速く輸送することが可能となります。

本研究により、2つの異なる物質の界面で生じる新しい物理現象が明らかになりました。この現象は、熱エネルギーの超高速輸送に加え、超高速の光デバイス開発や、光照射で生じた電子や正孔の超高速操作などさまざまな新技術に応用できる可能性があります。

本研究成果は、2024年5月30日(現地時間)に「Nature Communications」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業<JPMJFR211V>「高コヒーレンス・極短パルス電子線創出によるナノ構造体の動的構造解析の新展開(代表者:羽田 真毅)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究(B)<JP23H01101>「THz波ポンプ電子線回折プローブ実験系の開発と物質の強電場誘起現象の開拓的研究(代表者:羽田 真毅)」、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))<JP22KK0225>「超高速回折法と分光法の相補利用で見るファンデルワールスヘテロ構造のエネルギー輸送(代表者:羽田 真毅)」、特別推進研究<JP18H05208>「光と物質の一体的量子動力学が生み出す新しい光誘起協同現象物質開拓への挑戦(代表者:腰原 伸也)」などの支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Photoinduced dynamics during electronic transfer from narrow to wide bandgap layers in one-dimensional heterostructured materials”
DOI:10.1038/s41467-024-48880-3

<お問い合わせ先>

(英文)“Unveiling Novel Energy Phenomena from Light Exposure on Layered Materials”

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